遺留分とは?遺言書の効力を優先させるために知るべき3つのこと

遺留分

あなたは、遺留分について詳しく理解できていますか?

遺留分とは、法律で定められている相続人が最低限相続できる権利のことを指します。つまり、どれだけ特定の人物に相続したいと考えそれを遺言書に残したとしても、一定額を法律で定められている相続人に相続しなければいけないことになります。

そこでこの記事では、「遺留分」の定義をわかりやすくお伝えし、意図した通りの相続を実現するために知っておきたい「遺留分減殺請求をさせないための方法」について解説していきます。

あなたの思い通りの相続を実現するために、そして相続に関わるトラブルを出来る限り回避するためにもぜひ参考にしてみてください。

1.遺留分とは?遺留分制度を深く知るための6つのこと

遺留分とは、法律で定められている相続人が最低限相続できる権利のことをいいます。

例えば遺書に「遺産は全て愛人に相続する」と書いてあった場合、残された家族が財産を受け取ることができないように思えます。しかし、遺留分によって一定割合の財産を相続できるのです。

つまり遺留分とは、遺言書の内容に関わらず、残された家族の生活を保証するために設けられた最低限の相続の割合のことであり、遺言者(被相続人)がコントロールできない法で定められた相続分のことを指します。

ちなみに、遺留分制度は「被相続人が自由に財産を分配出来る権利」と「残された家族の生活の保障」の両面を調整するための制度です。被相続人が築いた財産の中には配偶者や家族の協力があってこそできた財産もあり、その分は家族が確保するべきですし、家族の生活に必要な一定の財産も必要なのです。

以上を踏まえたうえで、遺留分制度を深く知るための6つのことを解説していきます。

1−1.遺留分は遺言でも侵害できない

遺言書に遺留分を侵害する記載があっても相続人が遺留分を請求すると遺言書の記載よりも遺留分が優先されます。

1−2.遺留分権利者

遺留分権利者とは、遺留分を請求し受け取ることのできる権利を持つ相続人のことを言います。

では、誰が遺留分権者であり、遺留分権利者ではない人は誰なのかを見ていきます。

1-2-1 遺留分権利者になれる人

遺留分権利者になれる人は次の3つに当てはまる人です。

・配偶者
・子またはその代襲相続人
・直系尊属(父母・祖父母など)

代襲相続(だいしゅうそうぞく)とは、本来の相続人が遺言者(被相続人)の死亡以前に相続権を失っていた場合に、その相続人の子が代わりに被相続人の相続をする制度を言います(民法887条2項889条2項

相続できる人代襲相続人

また、まだ生まれていない胎児でも、生きて生まれてくれば遺留分権利者となることができます。

1-2-2 遺留分権利者になれない人

遺留分は相続人のみに認められる権利ですが、次の方は遺留分権利者になれません。

・遺言者の兄弟姉妹
・相続欠格者
・相続人廃除の扱いを受けた者
・相続放棄をした者

相続欠格者というのは、例えば被相続人を脅迫したり、遺言書を偽造したりするなど、犯罪行為をした場合、相続人の権利を剥奪されるというものです。この場合は問答無用で相続権を失い、遺贈も受けられません。ただし、相続欠格は本人に対する効果で、相続欠格者の子どもは代襲相続が可能です。

相続人の廃除とは、被相続人に対する虐待や重大な侮辱など著しい非行があるなどの理由により相続人となる資格を奪う制度です。相続人の排除は家庭裁判所に申し立てを行い、裁判を受けて決定します。

相続放棄は相続に関する一切の権利を放棄するため、遺留分も放棄することになります。相続放棄は家庭裁判所に申請をして認めてもらう必要があります。

1−3.遺留分の割合

遺留分の割合は法律で決まっており、その割合を次の表に記します。

相続人 遺留分割合
配偶者のみ 1/2
子どものみ 1/2
配偶者と子ども 1/2
配偶者と直系尊属 1/2
直系尊属のみ 1/3

遺留分の計算手順ですが、まず遺留分権利者の種類によって相対的遺留分が決まり、それに法定相続分の割合が掛け算され、個別遺留分が決定します。

相続人 遺留分権利者 総体的遺留分 法定相続分 個別的遺留分
配偶者のみ 配偶者 相続財産の1/2 100% 1/2
子どものみ 子ども 相続財産の1/2 100% 1/2
配偶者と子ども 配偶者 相続財産の1/2 1/2 1/4
子ども 1/2 1/4
配偶者と直系尊属 配偶者 相続財産の1/2 2/3 1/3
直系尊属 1/3 1/6
直系尊属のみ 直系尊属 相続財産の1/3 100% 1/3

1−4.遺留分減殺請求権

遺留分を侵害されている相続人が、遺留分を侵害している相続人に対して侵害額を請求することを遺留分減殺請求権(いりゅうぶんげんさいせいきゅうけん)と言います。相続人には遺留分を請求するか否かの選択権があり、請求しないという判断も可能です。この場合は遺言書に沿った相続がなされます。

遺留分減殺請求には時効があります。遺留分権利者が遺贈があったことを知ったときから1年間行使をしなかった場合は時効により消滅します。

また、相続開始の時から10年を経過したときも、同様です。ただし、時効までに1度でも遺留分を請求すれば消滅時効は防ぐことが出来ます。確実に請求した事実を残すためには内容証明郵便にて通知しましょう。

1−5.遺留分の対象となる財産

遺留分の対象となる財産は、遺言者の死亡時の財産だけではありません。遺言者の生前の贈与分も、遺留分の対象に含まれます。具体的には相続開始から遡って1年以内の贈与、遺留分権利者に損害を与えることを知っていて行った贈与、相続人への特別の贈与です。

1−6.遺留分の放棄

遺留分は相続人に与えられている「権利」ですから必ず行使しなければならないというものではなく放棄することも出来ます。例えば次男が生前に贈与を受けていて、被相続人から「お前には生前贈与をしたので、遺留分は放棄して欲しい。」と一定のメリットを提示された場合など、あらゆる場面において次男の意思によっては遺留分を放棄することができます。

遺留分の放棄は被相続人の生存中に家庭裁判所に申し立てをする必要があり、本人の意思であること、合理的で必要性がある理由であること、放棄の代償をえていることが認められれば受理されます。

遺留分放棄の撤回や取消は原則的にできません。

2.遺留分減殺請求をさせないためにできる3つのこと

相続させたくない法定相続人がいるケースは少なからず発生しますが、基本的には遺留分減殺請求の行使を防ぐこと(コントロールすること)は困難です。ただ、その中で最低限できることがあるのも事実です。ここでは遺留分減殺請求をさせないために最低限できる3つのことについて紹介していきます。

2−1.遺留分減殺をする財産の指定をする

例えば遺言書に「全財産は長男に相続させる。遺留分減殺請求は預金、現金、自宅以外の不動産からするものとする。」と記載があった場合、遺留分減殺請求額がそれらでまかなえるのであれば、その通りになります。つまり相続させたい財産にある程度の優先順位をつけることができるのです。

遺留分減殺請求ができる財産は「遺贈⇒贈与」の順で減殺されます。

「遺贈」とは遺言によって財産を無償で与えることをいい、遺贈は遺言書に表示した意思に従います。遺贈は被相続人の死亡後に効力が生じます。

「贈与」とは、与える側がもらう側に自分の財産を無償で与える意思を表し、もらう側が受け取るという意思を表すことによって財産を贈与する方法です。贈与は生前から行えます。

ですから遺言書作成時に、遺贈する財産と、遺留分減殺請求にあてがう財産に予め整理しておき、先の例の様に記載しておけば相続したい人、相続したい財産を思い通りに相続できるようになります。

この方法には法的拘束力があります。

2−2.付言事項(メッセージ)を残す

遺言書には「付言事項(ふげんじこう)」という項目を設けて気持ちを書き記すことができます。法的拘束力はありませんが、家族や今までお世話になって人へのメッセージを伝えたり、葬儀の方法を遺言書内に残したりすることができます。

この付言次項を活用して遺留分減殺請求をしないよう意思を明示する方法です。3つの事例を見ていきましょう。

2−2−1.心情的効果を狙う

付言事項に遺留分減殺請求をしないで欲しいしっかりとした理由と強い願いを記載します。「私の介護を長年イヤな顔一つせず尽力してくれたお礼として財産を譲りたい。」「私が事業で苦しんでいたときにAさんが助けてくれたから事業を回復することが出来た。そのお礼として財産を譲りたい。よって遺留分請求はしないことを願います。」このよう理由と強い願いを、相続人の心情を配慮し記載されていれば、心情的に考慮される可能性が期待出来ます。

2−2−2.生前贈与や特別受益を理由とする

遺留分の対象となる財産には生前の贈与も含まれます。例えば長男には住宅資金を与えたが、次男にはそのような資金を与えていなかった場合、「長男には住宅資金を与えたので、残った財産は次男に与えたい。よって遺留分請求はしないことを願います。」といった例です。

2−3.生前に相続人全員で協議する

遺言書を作成する場合、相続人が全員集まって話し合いをするということはあまり行われておりません。相続人が離れて暮らしている場合だと連絡することも少なくなり相談がしずらくなり、そうなると夫婦2人で遺言書を作成しようと考えます。また遺言書は一人ででも作成できますから尚更です。

しかし、遺言書を作成する前に相続人に自分の思いを伝えることでトラブルを未然に防ぐことも期待出来ます。反発も予想されますが、遺言者の意思を理解して貰うことで納得してもらえることも期待出来ます。

遺留分権者の納得が得られた場合、『遺留分権の放棄』の手続きができます。ただし手続きは家庭裁判所に届け出て許可の審判を受ける必要があります。

遺言者の意思を相続人に理解していただき、トラブルを未然に防ぐことはとても有効性の高い手段です。

3.まとめ

自分の思い通りに全ての財産を相続させたいと考えた場合、遺留分の問題は必ず解決しなければなりません。遺留分減殺請求が行使されない、またはコントロールする対策をご紹介いたしましたが、結局は遺留分権利者の意思によって行使されるか、されないかが決定します。

財産の承継に強い思いがある場合は、元気なうちに経験豊富な専門家に相談しながら紛争の起きない相続対策を考えていくことが、より良い解決策となります。

また、本文では紹介しませんでしたが「家族信託」で遺留分対策ができる可能性があります。

家族信託とは財産を持つ方が、保有する不動産や預貯金を信頼できる家族に託し、管理・処分を任せる財産管理の制度で、平成19年に施行された改正信託法によるものです。比較的新しい制度で、まだ最高裁の判例も無いため弁護士によっても解釈が異なっているのが現状です。

この家族信託の活用については『家族信託とは|親にも説明できる家族信託のしくみとメリット』に記載していますので、参考にして頂ければこれまでとは違った相続、財産管理のヒントを得ることができます。

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