認知症対策に抜群の効果を発揮する≪家族信託≫の3つのメリット

新聞や雑誌、テレビで認知症対策に効果を発揮する家族信託について目にするようになりました。

ただ、放送時間や紙面の都合上、説明は断片的になりがちです。本当のところ、認知症対策に家族信託がどのようなメリットがあるのか、またデメリットはないのか、あなたも気になるところだと思います。

結論から言えば、認知症対策を検討するうえでは、成年後見制度など、これまでのどの制度よりも家族信託はあなたやあなたのご家族の力になってくれるはずです。私はこれまで300名以上のお客様から認知症に関するご相談を受けてきたことから、家族信託の有用性を確信をもってお伝えすることができます。

家族信託が認知症に対してどのようなメリットがあるのかを知るには、まず認知症があなたやあなたのご家族にとって、どのような問題が起こるのか正しく認識することが大切です。

この記事では、認知症が引き起こす問題と、その問題を解決してくれる家族信託について、メリットとデメリット、そして活用時の注意点までわかりやすくお伝えしていきます。

1.認知症が引き起こすトラブルに効果を発揮する家族信託の3つのメリット

家族信託は認知症が引き起こすトラブルの解決策になってくれます。そのなかで1番のメリットは認知症による財産凍結問題を解決できることです。ここでは財産凍結問題を中心に、家族信託が認知症トラブルにどのように活用できるのかについて、ご紹介します。

1-1 最大のメリットは認知症による財産凍結を回避し、介護費用を用意できること

認知症になり、意思能力が失われてしまうと契約行為ができなくなってしまいます。

そのため、介護施設への入居費用を捻出するために実家や収益不動産を売却したくても、売却行為自体が契約行為のため、売却できなくなります。これが認知症が引き起こす財産凍結問題です。
家族信託であれば、認知症による財産凍結問題を解決することが可能です。

もし、あなたが実家や他の不動産の売却資金を両親の介護資金にあてようとしていた場合、売却が一切できませんので、介護資金はあなたやご兄弟が負担することになります。ご両親の介護が必要な年代は、お子さまの大学進学とも重なり教育費も大きな負担となっているはずです。さらには、自分自身の老後資金の準備も必要です。こうした厳しい状況下で、介護資金をあなたが負担することは困難でしょう。

親子で家族信託を利用する場合、両親が所有する財産の管理・運営を、信頼のおける子供に任せることで、両親が認知症になったとしても、子どもの判断で所有していた不動産の売買や預金の引き出しができるようになります。こうすることで認知症が引き起こす財産凍結問題を解決することができます。

なお、家族信託ではすべての財産を子どもが管理運用するわけではなく、両者の契約において定められた財産に限定することが可能です。

1-2 詐欺や訪問販売から両親の財産を守ることができる

家族信託では、両親の財産の管理運営をお子様の権限で行うため、オレオレ詐欺やしつこい訪問販売によって財産が失われる心配はありません。

たとえば、現金1,000万円を信託する財産に指定した場合、現金1,000万円は信託財産の管理のために作成された信託口口座に親が振り込むことになります。そのため、たとえご両親が金融商品を購入したいといっても、現金はお子様が管理しているので契約を進めることはできません。訪問販売や金融機関からの投資商品の購入、オレオレ詐欺からも財産を守ることが可能です。

1-3 空き家問題を解決することができる

認知症が発症して財産が凍結してしまうと、実家は売却することも、貸し出すこともできなくなります。そうなると、問題になるのは介護資金の工面だけではありません。ランニングコストも負担する必要があるのです。

空き家の固定資産税や植栽の手入れ、定期的な空気の入れ替えなど、誰も住み続けていないのにもかかわらず、あなたは不要なコストと手間を負担し続ける必要があるのです。さらに、相続が発生してからも、相続人の配偶者も認知症になっていた場合には、同様に売却することができず、後見人を申し立てないと売却は一切できません。引き続きランニングコストを負担することになるのです。

2.従来の認知症対策 法定後見制度をお勧めできない3つの理由

これまでの認知症対策としては、成年後見制度があります。

成年後見制度には、2つの種類があります。ひとつが任意後見制度、もう一つが法定後見制度です。

このうち、認知症になったあとは法定後見制度を利用することになりますが、残念ながら、使い勝手が良い制度とは言えません。ここでは、これまでの認知症対策としての法定後見制度の限界について確認していきながら、その限界を補ってくれる家族信託の特徴を比較していきます。

2-1 法定後見制度では自由な財産処分ができない

法定後見制度は自由な財産管理という点では十分ではありません。

法定後見制度では、いくら多額の相続税がかかりそうだといっても、節税対策は一切できなくなります。相続税対策として、課税対象額の財産を減らすために、生前に子供や孫に贈与する方法があります。これは被後見人の財産を減らす行為であり、相続人にはメリットあるが、被後見人にはメリットがないため、贈与することはできません。

また、相続税対策のひとつとして、養子縁組を利用して法定相続人を増やし、節税するという手法があります。しかしこれも判断能力がないと判断されている被後見人は、結婚や離婚、養子縁組などの身分行為も一切できなくなります。これら行為はたとえ後見人がついていたとしても、行うことはできません。

法定後見制度でできなくなるのは、相続税の節税対策だけではありません。認知症になる前に約束していた贈与も同様にできなります。

【事例】
相談者の村田さんは、数年前に新潟県の実家に帰った時に、部屋からの異臭に気が付きました。最初は部屋が物で散乱していたので、泥棒が入ったと疑ったそうなのですが、一人ぽつんとテレビを見続けている父親の姿を発見し、大変なことが起きていると悟ったのです。父親にいつからお風呂に入っているか聞いても要領を得ず、自身の異臭と部屋の惨状にまったく意に介していないようでした。

 

すぐに物忘れ外来に連れていき医者に診察してもらうことにしあいた。すると、脳に腫瘍があることが判明、認知症と診断されました。幸い長男である村田さんのことは理解したそうなのですが、孫の名前は言えなくなっていました。

 

まだ住宅ローンが残っており、長女がこれから大学に進学するところで学費もかかります。会社を辞めて、介護をすることもできません。やむなく後見制度を利用して、職業後見人がつきました。

 

しばらくして、村田さんの長女が私立の大学に合格。父親の意思がはっきりしているときに、大学の入学金は出してくれると言っていたので、成年後見人に父親の口座から学費を捻出したいと相談したのです。すると「お父様のために使う大切なお金なので、入学金を出すことはできない」とつれない声が返ってきて、驚いたそうです。

 

介護施設の利用料が毎月25万、年金は月額18万円が入ってきますが、毎月7万の赤字になります。今後、認知症が重症化して、施設が変わるともっと費用がかかると説明を受けて、しぶしぶ納得されたそうです。

実はこうしたケースは珍しくはありません。いくら意思がはっきりしているときに、約束をしたからといっても、その通りに財産を使うことはできません。たとえ、本当に約束が交わされていたとしても、制度の趣旨は本人の財産を維持保全することが目的ですから、職業後見人としても首を縦に振ることはできないのです。

成年後見制度を利用するということは、被後見人の財産は家族の手を離れると思ったほうがよいでしょう。

《家族信託であれば自由な財産管理が可能》

家族信託であれば、信託契約の定められた範囲で、自由に財産の管理運営処分をすることができます。

管理運営に関して、第三者の許諾を取る必要は原則としてありません。さらに、不動産を売却して得た資金を、ご両親の生活のために収益不動産に組み替えることも可能です。契約で定められた範囲であれば、財産のかたちを変えてしまうこともできます。

また、一方で契約において管理運用の手法についても限定することも可能です。たとえば、実家を貸し出すことは良くても、売却するのはご両親が亡くなってからにしてほしいといった、要望を契約に盛り込むことも可能です。

2-2  すべての財産が家庭裁判所の管理下に置かれてしまう

法定後見制度によって後見人がつくということは、被後見人のすべての財産を管理することになります。特定の財産だけを指定することはできず、あらゆる財産が管理対象となるのです。介護費用にあてたいから預貯金を自分で引+き下ろせるようにするとか、不動産を売却するため、また遺産分割協議に参加するため、など後見人をつける理由は様々ですが、理由によって財産の範囲が特定されるわけではないのです。

「自宅を売って介護施設の入居費用に充てたい」このように考えて、実際に売却したとしても後見制度は終わるわけではなく、継続して被後見人の財産を守っていくことになります。不動産の処分が終わったからといって、後見制度を取り止めることはできません。本人が亡くなるまでずっと続くことになります。すべての財産が家庭裁判所の管理下に成るのです。全くの赤の他人が、あなたの親の財産を管理することになるのです。

《家族信託であれば管理する財産の範囲を指定できる》

法定後見制度がすべての財産が保護の対象となりますが、家族信託では管理を委託する財産の範囲を指定することができます。

たとえば、自宅のほかにアパートと駐車場を所有している場合に、自宅と駐車場のみを委託する財産に指定することが可能です。また、現金の管理を委託する際にも、すべての現金だけでなく、金額を指定することが可能です。

2-3 職業後見人がつくと毎月費用がかかってしまう

法定後見制度において、弁護士や司法書士などの職業後見人がついた場合に、その費用を負担する必要があります。

その費用は、一時的なものではなく、亡くなるまでずっと負担し続けなくてはいけません。

私が面談で出会った資産家の方は、財産規模を大きかったからでしょうか。職業後見人の弁護士に毎月5万円、年間60万円もの報酬を支払っている方がいました。弁護士の後見人は、あくまでも事務的な手続きをするだけで、施設に入っている父に会うこともほとんどないのに毎月5万円も取られるのは理不尽すぎると憤っていました。

成年後見人(職業後見人の場合)

  • 管理財産額1000万〜5000万 基本報酬額月額3〜4万
  • 管理財産額5000万以上   基本報酬額月額5万〜6万

家族が後見人になったら費用はかからないのでしょうか。もちろん、家族が後見人として、申し立てをすることも可能です。しかし、現状親族が後見人になる割合は、約3割でほとんど士業の職業後見人が家庭裁判所から選任されます。もし、後見人になれた場合でも、監督人がつきます。この場合でも管理財産額が5000万以下の場合は、月額1〜2万円、5000万を超える場合は、2.5万円〜3万と裁判所で定められています。

《家族信託は運用コストがかからない》

家族信託において、財産の管理運営を任された人に対する報酬は発生しません。

信託契約の締結に当たっては、契約書の作成費用やコーディネート費、さらに信託する不動産の登記費用など、初期費用が必要となりますが、その後の財産の管理運営に関してランニングコストが発生することはありません。

法定後見制度と認知後見制度のまとめ

法定後見制度 任意後見制度
利用時期 判断能力が衰えた後(判断能力が不十分) 判断能力が衰える前(判断能力がある)
効力発生 判断能力が衰えた後
支援の内容 法律による定めあり 契約の内容による
後見人の選任 家庭裁判所が選任 本人の意思による
後見人に対する報酬 家庭裁判所が決定 契約内容による
特徴 成年後見人には、被後見人が詐欺等の被害にあった場合、その契約行為についての取消権があり、被後見人の財産をより強く守ることができます。ただ、後見人の選任や支援内容も法律によるなど、任意後見制度ほどの自由度はありません。 自身の希望に沿って老後のケア方法や財産管理などを自由に設定でき、後見人も自信が信頼する人に依頼することが可能です。一方で、被後見人が行った契約行為についての取消権は、任意後見契約で定められた代理権の範囲にとどまります。

3.認知症と診断されても進行度合いによって家族信託は検討できる

認知症になってしまったとしても、すべての状況で家族信託が利用できないわけではありません。ここでは家族信託がどのような状況下で利用できるかを確認していきます。

3-1 ご両親が75歳までには家族信託を検討したい

家族信託も契約行為に当たるため、ご両親の意思能力が失われる前に、信託契約を結ぶことが必要です。そのため、認知症が重症化して意思能力が失われてしまうと、家族信託を利用することはできなくなります。

ご相談に来られる方の大半が物忘れが目立つ、介護施設に入居して寝たきりになっているなど、信託契約を締結できるか瀬戸際のケースです。ご両親の高齢になればなるほど、制度に対する理解力も落ちてくることが考えられます。そのため、ご両親が75歳になるまでには、家族信託を検討することが理想です。

3-2 契約締結時の意思能力が契約の可否を決める

軽度の認知症の場合(MCI:軽度認知障害)、信託契約の内容を理解したうえで契約締結時に意思能力がはっきりしていれば、信託契約を締結することも可能です。

なお、その際には契約書は公正証書で作成して、公証人の前で意思能力がはっきりしていることを証明してもらうことが大切です。第三者による証明がない場合には、契約締結後に他のご家族から信託契約の有効性について、無用な裁判を起こされてトラブルが起こりかねないので専門家と相談しながら進めましょう。

4. 家族信託を利用する際の注意点

家族信託を利用する際の注意点についてまとめました。家族信託を本気で考えられる方はぜひこちらも確認しておきましょう。

4-1 信頼関係がなければ家族信託はおすすめできない

家族信託は財産を所有している人(委託者兼受益者)が、その財産の管理運営する権利を管理人(受託者)にゆだねることになります。管理人(受託者)には財産の売却も含めた強い権限が付与されるので、選任には両者の信頼関係が必要となります。そのため、信託契約の大半は親子間で結ばれることとなります。もちろん、お子様がいらっしゃらないケースでは、信頼のおける甥や姪を管理人(受託者)とすることができます。

ただ、信頼して財産を預けることができるだけの信頼関係を親子で築けていない場合には、家族信託はおすすめできません。管理人(受託者)の財産管理を監督する「信託監督人」制度もありますが、そこまで設定するのであれば、別の手段を探されることを私はおすすめします。

4-2 兄弟、親戚への根回しは絶対に欠かせない

家族信託は、財産を預ける人(委託者)と財産を預かり管理運用する人(受託者)の二人で契約することができます。贈与と同じで、財産を持っている人と財産をもらう人の契約で、他の相続人に同意を得る必要はありません。

しかし、家族信託をする場合は、相続人全員の合意を得ることはとても重要です。財産を管理する人は、財産を持っている人から100%財産をもらえる訳ではありません。あくまでも、信託の目的に沿って財産を管理する人にすぎません。他の相続人に仕組みをきちんと説明しておかないと誤解や不信感を与える可能性が出てきます。

【コラム】
私自身が経験した事例をご紹介します。

栃木県にひとりで暮らす高齢の母親の家族信託について、東京で暮らす息子さんから相談を受けました。母親が所有している東京の収益不動産がいつのまにか、売却手続きに入っていたというのです。

母親に聞いても売りに出した記憶はないということ。急いで実家に戻って、契約書類を確認したところ、たしかに不動産の仲介取引に出している形跡がみつかったのです。書類を見せながら、母親に聞きましたが、以前からある不動産会社から売却の勧誘を受けていたことがわかりました。ただ、実際に売りに出している認識はなかったというのです。そこで、息子さんは母親の財産管理が心配になり、家族信託を検討することになったのです。

私も息子さんと一緒に栃木県の実家までお伺いさせて頂き、お母様に家族信託の目的と必要性について丁寧に説明させてもらいました。ゆっくりと、そして時に繰り返しご説明することで信託契約にもご納得頂き、次回は具体的な契約内容についてお話しさせていただく予定でした。

しかし、ここでご相談者の長女から横やりが入ったのです。相談者である長男が家族信託を利用して財産を独り占めしようとしている。長男には受託者として財産を管理することで、そのまま財産を兄が相続するものだと勘違いしていたのです。結局、信託契約は結ばれずにいまに至っています。

相談者から見れば、長男にはきちんと誠意をもって信託契約の内容について話したはずでした。しかし、家族信託は世間的にはまだまだ認知がされていない新しい手法です。長女さんから見れば、よくわからない手法を使って財産を独り占めしようと見えたのでしょう。

相続財産に関する話題は大変デリケートなものです。

きちんと説明したつもりでも、家族信託の目的や信託契約がご両親のためであるということを、家族全員が理解することができなければ、いくら画期的な制度とはいえ、正しく機能することはありません。

4-3 相続『税』対策にはならない

家族信託は認知症対策や円滑な遺産分割対策につながることはあっても、直接相続税の節税になることはありません。

直接的に相続税の対策にはなりませんが、相続税対策と家族信託はセットで行うことは効果的です。たとえば、ご両親が効果的な節税対策を税理士と立案、実行しようとしても、節税施策を実行中に認知症が一気に進行してしまえば、相続税対策をこれ以上進めることはできません。あらかじめ家族信託を利用して、現金や不動産を信託財産としていれば、財産の委託を受けたお子様の判断によって、対策を継続させることが可能になります。相続税対策を検討する際には、家族信託についてもあわせて検討しましょう。

まとめ

認知症対策を考える上では、家族信託は今後欠かすことのできない手法となるはずです。これまでの法定後見制度をひとたび利用してしまうと、撤回することは大変困難です。だからこそ、ご両親が健康なうちに家族信託をぜひ検討頂きたいと思います。

 

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