遺言執行者の報酬の相場とは?報酬の目安と3つの決定要因

遺言執行者の報酬相場

遺言執行者の報酬相場は、「弁護士」「司法書士」「信託銀行」の3つの専門家によって異なります。

この中でも、司法書士がもっとも安く、報酬相場は20万円〜75万円前後です。次いで弁護士、信託銀行と報酬相場が高くなっていきます。しかし、専門家に依頼する場合に見るべきは報酬額だけではありません。私たちは、トラブル発生時の対応など全面的にサポートしてもらえる弁護士に依頼するべきだと考えています。

今回の記事では、各専門家の報酬相場だけでなく弁護士に依頼するべき理由や、具体的な報酬が決定するフローまで含めて丁寧に解説していきます。ぜひ参考にしてみてください。

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1、遺言執行者の報酬の相場

遺言執行者を専門家に依頼する場合は、「弁護士」「司法書士」「信託銀行」の3つがあります。

それぞれの遺言執行者の報酬の相場まとめたので、以下の図をご覧ください。

遺言執行者の報酬相場

図のように、現実的な財産額である500万円〜5000万円までの間で考えると、信託銀行の報酬が弁護士と司法書士に比べて80万〜100万円ほど高い傾向があります。

さらに、サービスの内容そのものに大きな違いがないため、信託銀行を遺言執行者に選ぶことをお勧めしていません。

以上のことから、今回の記事では、弁護士か司法書士に依頼することを前提として、それぞれの報酬相場についてご紹介させていただきます。

1−1、弁護士の報酬相場は30万円〜100万円前後

弁護士の遺言執行者の報酬は、基本的に旧弁護士会報酬基準規程に沿って料金が定められています。

遺言執行者の報酬は、ほとんどの弁護士事務所では財産が300万円以下で30万円の報酬のみですが、300万円以上だと24万円〜204万円+0.5%〜2%の報酬がかかります。

旧弁護士会報酬基準規程は平成16年3月に廃止されていますが、現在も報酬の基準としている弁護士事務所が大半です。

旧弁護士会報酬基準規程では、遺言執行者の報酬が以下の表のように4つのパターンに定められていました。

旧弁護士会報酬基準規程
相続財産の価額 報酬
300万円以下 30万円
300万円〜3000万円以下 2%+24万円
3000万円〜3億円以下 1%+54万円
3億円を超える 0.5%+204万円

出典:宮崎県弁護士会

旧弁護士会報酬基準規程が弁護士の報酬の相場となっていますが、実は弁護士事務所によって報酬額に差があります。

下記に5社を比較した報酬の表があります。

相続財産の価額 A社 B社 C社 D社 E社
300万円以下 30万円 30万円 30万円 30万円 30万円
300万円〜3000万円 2%+24万円 2%+24万円 3%+20万円 2%+24万円 2%
3000万円〜3億円以下 1%+54万円 1%+54万円 1%+54万円 1%+54万円 1%
3億円を超える なし 0.5%+204万円 なし 0.5%+204万円 0.5%

一見するとあまり差がないように見えますが、各事務所とも財産に対しての割合が異なる金額があります。

続いて下記をご覧ください。

弁護士の報酬相場

A社とC社を比較したときに遺言執行者の報酬として50万円の差が出ています。

以上のことから弁護士事務所ごとに報酬の差が大きいと言えます。

実際に弁護士事務所を選ぶときは報酬金額だけではなく事務所の実績や在籍している弁護士の人柄、経歴なども考慮した上で弁護士事務所を比較して遺言執行者に指定しましょう。

1−2、司法書士の報酬相場は20万円〜75万円前後

司法書士は弁護士のように報酬規定の基準がないので、下記の表を見ていただくとわかる通り司法書士事務所によって報酬は様々です。

司法書士の報酬相場

 

司法書士事務所5社の比較表
相続財産の価額 A社 B社 C社 D社 E社
500万円以下 一律1% 25万円 一律2% 20万円 2.0%
500万円〜5000万円 一律1% 1.2%+19万円 一律2% 1.2%+15万円 1.5%(3000万~5000万)
5000万円〜1億円 一律1% 1%+29万円 一律2% 1%+25万円 1.2%
1億円〜3億円 一律1% 0.7%+59万円 一律2% 0.7%+50万円 1.2%
3億円超 一律1% 0.4+149万円 一律2% 0.4+130万円 0.8%

基本的に司法書士事務所は遺言執行者の報酬金額が低いですが、事務所によって高額な金額を設定しています。

司法書士事務所についてもを比較して、遺言執行者に指定する必要があります。

 


2、報酬の3つの決定要因  

遺言執行者の報酬は原則的に遺言書の記載内容によって決まります。

報酬が決まるまでの流れ

しかし、遺言書に記載されている専門家の報酬額があまりにも低い場合、専門家は遺言執行者の就職を拒否することが出来ます。

遺言書に報酬額の記載がないときは相続人との協議か家庭裁判所への申し立てで報酬を決定しますが、協議を行うよりも家庭裁判所に報酬の申し立てを行うことを推奨します。

家庭裁判所に報酬の申し立てを行うことで、公平に遺言執行者の報酬を決めることができるので、遺言執行者と相続人のトラブルを未然に防ぐことが出来るからです。

また、専門家に初めから依頼する場合は、それぞれの専門家が提示する金額に応じる必要があります。

上記のことを踏まえて報酬の決定要因について詳しく見ていきましょう。

2−1、遺言書の記載内容によって決まる

遺言書に報酬額が記載されている場合、遺言執行者は記載通りに報酬を受け取らなければなりません。

弁護士や司法書士の事務所は遺言書の記載内容に従うので、事務所が定めている報酬額が加算されるということはありません。

遺言では下記のように遺言執行者の報酬が記載されています。

◯条 遺言者は本遺言の遺言執行者として次のものを指定する。

氏名 ◯◯(遺言執行者の名前)

生年月日 ◯年◯月◯日

住所 東京都新宿区西新宿◯-◯◯-◯

連絡先電話番号 ◯◯

◯条 前条の遺言執行者の報酬は、財産評価額の◯%とする。

遺言執行者は遺言書に記載されている報酬に納得がいかない場合は、遺言執行者の就職を拒否することが出来ます。(遺言執行者は指定されている報酬分しか受け取れません)

例えば、専門家(弁護士や司法書士)への報酬金額が相場よりも著しく低い場合、専門家が遺言執行者の就職を拒否することが考えられます。

遺言書で遺言執行者の選任を第三者に委託していない限り、相続人が遺言執行者を指定することはできません。

そのため、他の専門家に遺言執行者を依頼することも出来ません。

このような場合は、家庭裁判所に遺言執行者の選任を申し立てる必要があります。

2−2、相続人と遺言執行者の協議で決まる

遺言執行者が遺言で指定されていても、遺言執行者の報酬の記載がない場合があります。

報酬の記載がない場合は相続人全員と、遺言執行者で協議を行って遺言執行者への報酬を決定します。

協議では一般的に、財産の1〜2%の金額が報酬として妥当とされています。

協議で報酬を決める

相続人の中で1人でも報酬について納得していなかったり、遺言執行者が高額な報酬を請求してきて折り合いがつかなかったりすると報酬が決まりません。

2−3、家庭裁判所で報酬が決まる

相続人と遺言執行者の間での協議で報酬の折り合いがつかなかった場合、家庭裁判所へ報酬の決定を申し立てることができます。(民法第1018条:家庭裁判所は、相続財産の状況その他の事情によって遺言執行者の報酬を定めることができる。ただし、遺言者がその遺言に報酬を定めたときは、この限りでない。)

申立権者は遺言執行者です。

家庭裁判所は相続の複雑さと、遺産の規模で遺言執行者の報酬を決定します。

相続の複雑さとは、不動産が複数あり登記手続きに時間が取られることや、相続人の人数が多く財産の分配が難しい場合などです。

遺産の規模は遺言者の財産がどのくらい残されているのかを指します。

遺産が小規模で尚且つ遺言執行者の業務が単純なものでは、遺言執行者の報酬は30万円程度と言われています。

ある程度の規模を超えると遺産の評価額の3%程度となります。

しかし、遺産に対する明確な基準がありませんので、申し立てを行わないと遺言執行者の報酬がわからないのが現状です。

弁護士や司法書士の報酬の相場では300万円以下の財産で報酬が30万円程度なので、小規模の財産とは300万円以下となります。


3、遺言執行者は「弁護士」を選ぶ

弁護士はトラブルになった時に法律をもって対処してくれること、法律の専門家のため相続の手続き関係に秀でていることから遺言執行者に適していると言えます。

遺言執行者としての業務も司法書士や信託銀行と変わらず行ってくれます。司法書士は弁護士よりも遺言執行者の報酬が低いので、一見すると司法書士を遺言執行者に選任すべきではないかと考えます。

しかし、司法書士の専門分野は文書作成なので、相続のトラブルになったときに訴訟対応が全て出来る訳ではありません。訴訟が必要になったときは、弁護士に仕事を依頼して今起きている相続のトラブルを初めから説明しなければなりません。

信託銀行は遺言執行者の業務を行うプランがあり、弁護士や司法書士と同じように遺言書の内容を執行してくれます。個人ではなく企業として対応してくれるので安心感がある反面、遺言執行者としての報酬の金額が高額です。

訴訟になった場合の対応と、報酬の金額をなるべく抑えたい人にとっては司法書士や信託銀行よりも弁護士を推奨します。

弁護士を選ぼう


4、まとめ

いかがでしたでしょうか?

遺言執行者の報酬相場をおさらいすると

・司法書士の報酬相場は、20万円〜75万円前後
・弁護士の報酬相場は、30万円〜100万円前後
・信託銀行の報酬相場は、108〜200万円前後

その中でも訴訟になった場合の対応などを考慮すると、全面的にサポートをしてもらえる弁護士を遺言執行者に選任するのが良いでしょう。

また、実際にあなたが遺言執行者を指定する場合は、相続財産と各弁護士事務所によって金額が異なりますので、複数の事務所に問い合わせを行いましょう。

実際に具体的な費用や相談を通じて、最終的にあなたが最も信頼できると感じた事務所に依頼することをお勧めします。

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