すぐ実行に移せる!後見人制度開始の申し立て徹底ガイド

書類作成画像

成年後見制度を利用する際に、まず必要になるのが家庭裁判所への申し立てです。

申し立てとは、家庭裁判所に対して書面で後見制度の開始をお願いする手続きをいい、制度の利用条件を満たす旨を証明するためにさまざまな書類が必要になります。

しかし、どんな書類が必要でそれらをどの家庭裁判所に提出すればいいのか、また、どれくらいの費用がかかり、誰が行うのかなど、けっしてわかりやすいものとは言えないですよね。

ですが、家庭裁判所への申し立てを行わなければ後見制度は利用できません。

認知症の進み具合などによっては時間的な余裕がないこともありますので、すみやかに申し立てを行えないと、思わぬところで不利益を被ってしまったり、思い通りの利用ができなかったりということになりかねません。

このページでは、そのようなことに陥らず迅速に申し立て手続きの第一歩が踏み出していただけるように、わかりやすく解説していきたいと思います。

1 成年後見制度の種類と後見開始時の申し立て手続き

まずは基礎知識として、成年後見制度の種類と、申し立て手続きの概要について解説しましょう。

成年後見制度は、大きく別けて2種類の制度に分かれています。

これらは、後見人を必要とする人の判断能力の有無を基準に分かれていて、1つは、すでに判断力が低下してしまっている人に対して後見人をつける「法定後見制度」、もう1つはまだ判断力に問題のない人が前もって後見人を決めておく「任意後見制度」です。

この2種類の制度は、後見が開始されるタイミングのほか、制度の仕組みが違うことから、申し立ての手続き方法も大きく異なります。

また、どちらの制度も申し立て手続きは大変な作業で、司法書士や弁護士といった専門家に依頼するケースが多いというのが実情となっています。

では次に、この2つの制度ごとに、申し立ての手続き内容を詳しく見ていくことにしましょう。

2 法定後見制度の申し立て

法定後見制度を利用する場合には、家庭裁判所に対して「後見開始の申し立て」を行う必要があります。

この制度は、上述の通りすでに認知症の発症などの理由で判断力が低下している人に後見人をつける際の制度ですが、この制度は、さらに判断力低下の度合いによって次の3種類の制度に分かれています。

<後見>
判断能力がない状態が日常的になってしまっている場合に適用される制度

<保佐>
日常的ではないものの判断能力が著しく低下してしまっている場合に適用される制度

<補助>
そこまで著しくはないものの判断能力が低下している場合に適用される制度

申し立て件数グラフ
引用:最高裁判所事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況」

※統計によりますと、これら3つの制度のうち、「後見」の申し立て者がずば抜けて多く約80%、「保佐」が約15%、「補助」が約5%となっており、法定後見制度利用者のほとんどが「後見」を利用しています。

上記3つの制度は、申し立ての手続き方法はほぼ同じですが、申し立て費用が若干異なるなど違いがあります。

それらの相違は詳しくは以下の項目ごとに見ていくことにして、では、さっそく申し立て手続きについて具体的に見ていきましょう。

2−1 申し立ての内容と後見開始までの流れ

法定後見制度開始の申し立ては、家庭裁判所に対して後見の開始をお願いすると同時に、後見人等(後見人・保佐人・補助人)の選任を依頼します。

後見人等は、家庭裁判所が選ぶことになっています。

まず、申し立て書に、選任される後見人等の希望を記載します。
「候補者」を家庭裁判所に伝えることはできますが、その希望通りに選ばれるとは限らず、あくまでも家庭裁判所が独断で選ぶことになります。

そして、家庭裁判所がその申し立てを受け、後見人等を選んで審判を下し後見が開始されます。

書類の作成、提出から後見が開始されるまでのおおまかな流れは次のようになっています。

これら申し立てから後見開始までの期間は、おおむね3ヶ月程度となります。

2−2 申し立てる家庭裁判所、書類の提出方法は?

申し立てを行う先の家庭裁判所は、被後見人になる人(後見人が必要な人)の住所地を所轄する家庭裁判所になります。

住所地を所轄する家庭裁判所を調べるにはこちらサイトをご利用ください。

また、必要書類の提出は、家庭裁判所の窓口で行うこともできますし、書類を郵送して行うこともできます。

2−3 申し立てができる人は?

法定後見開始の申し立てができる人は次のいずれかの人になります。

●被後見人となる人本人
●本人の配偶者
●4親等内の親族
●上記親族がいない場合に限り市区町村長、検察官など特殊な立場にある人

※「4親等内の親族」とは下記図に記載されている人になります。

四親等内の親族

2−4 申し立てに必要な書類は?

法定後見制度の申立てを行う際に家庭裁判所に提出する書類は次のとおりになります。

<各家庭裁判所から取り寄せる書類>

●後見・保佐・補助開始 申立書 ※各種ダウンロードページ
●申立書の附票(申立事情説明書・親族関係図・財産目録・収支状況報告書・後見人等候補者事情説明書・親族の同意書等、家庭裁判所により若干異なります)※各種ダウンロードページ親族関係図ダウンロードページ:)

※上記リンクは東京家庭裁判所の書類ダウンロードページですが、各家庭裁判所のホームページでもダウンロードが可能ですし、家庭裁判所に行けば無料で入手できます。

<各市区町村の役所から取り寄せる書類>
●本人、後見人等候補者の戸籍謄本
●本人、後見人等候補者の住民票

<各法務局から取り寄せる書類>
●登記されていないことの証明書

<その他>
●医師による診断書
●申し立て費用(収入印紙・郵便切手)

必要書類は上記のほか、家庭裁判所ごとにそれぞれ指定する書類が必要となりますので必ず各家庭裁判所のホームページ、申し立ての手引き等で詳細をご確認ください。

2−5 申し立てにかかる費用は?

申し立てにかかる費用は以下の通りとなります。

<申し立て手数料(収入印紙)>
●後見:800円分
●保佐:800〜2400円分(保佐人に持たせる権限の数により異なります)
●補助:1600〜2400円分(補助人に持たせる権限の数により異なります)

<登記費用(収入印紙)>
2600円分

<連絡費用(切手)>
3000〜5000円分(後見、保佐、補助ごとに異なるほか、家庭裁判所ごとにも異なります)

<精神鑑定費用>
こちらは家庭裁判所が、鑑定が必要と認めた場合のみにかかる費用となり、5〜10万円かかります。ただし、統計によると鑑定費がかかるのは全体の1割程度のケースです。

費用についても上記のとおり家庭裁判所によって金額が異なるため、家庭裁判所への問い合せやホームページでの確認は必須です。

また、法定後見制度を利用した場合には、選任された後見人等に対して後見が行われる期間を通じて報酬が発生する点にも注意が必要です。

2−6 申し立てを取り消すことはできる?

上記の申し立てを行ったにもかかわらず、後見が始まってから親族間の意見が対立したり、費用が負担できなくなったりなどといった場合には、申し立てを取り消すこともできます。

ただし、この場合には家庭裁判所に許可を得る必要があります。

家庭裁判所が選任した後見人が気に入らない、自分たちの思い通りにならないなどの理由では取り消しが認められないこともあるようです。

3 任意後見制度の申し立て

では次に、任意後見制度の申し立てについて解説しましょう。

任意後見制度は、申し立てを行って後見を開始する以前に、まず、誰を後見人にするか、その後見人にどういう職務を担ってもらうかについて、正式に契約するところから始まります。

この契約を「任意後見契約」といいます。

留意点としては、この契約時点では、被後見人になる予定の人本人は認知症などにかかっておらず、判断能力が十分にあるということです。

つまり、将来的に自分が認知症などにかかって判断能力がなくなったときのために、前もって後見制度を利用する準備をしておくのが任意後見制度なのです。

では、任意後見制度の申し立てはいつ行うのかというと、いざ認知症などによって判断能力が低下したときに行うこととなります。

申し立てにより、正式に結ばれた任意後見契約が家庭裁判所の監督のもと実行に移され、後見が開始されるというわけです。

以上の流れをチャートで表わすと次のようになります。

任意後見の場合、申し立てから後見開始までは、通常1ヶ月ほどの期間を要します。

3−1 申し立て前の契約手続き

上述のとおり、任意後見制度はまず、後見人になる人を任意に選び、その人との間で「任意後見契約」という契約を交わすことになります。

この契約は、公証人役場に後見契約を結ぶ両者が赴き、公証人の前で公正証書を作成します。

これにより、任意後見契約が正式に締結されます。

3−2 申し立ての内容

任意後見開始の申し立ては、「任意後見監督人選任の申し立て」と呼ばれます。

つまり、この申し立てにより、家庭裁判所に対し任意後見監督人を選んで下さいと、お願いするわけです。

任意後見人は、必ず家庭裁判所が選んだ任意後見監督人により、契約通りに後見が行われているかどうか、監督、指導を受けることになっています。

この任意後見監督人が家庭裁判所によって選ばれたタイミングで、任意後見が開始されるのです。

3−3 申し立てる家庭裁判所、書類の提出方法は?

申し立てを行う先の家庭裁判所ですが、やはり法定後見制度と同様、こちらも被後見人になる人(本人)の住所地を所轄する家庭裁判所になります。

住所地を所轄する家庭裁判所を調べるにはこちらのサイトをご利用ください。http://www.courts.go.jp/saiban/kankatu/index.html

また、必要書類の提出は、家庭裁判所の窓口で行うこともできますし、書類を郵送して行うこともできます。

3−4 申し立てができる人は?

法定後見制度開始の申し立てができる人は次のいずれかの人になります。

●被後見人となる人本人
●本人の配偶者
●4親等内の親族
●後見人となる人

※4親等内の親族とは、父母、子供、兄弟姉妹、祖父母、孫、曾祖父母、ひ孫、おじおば、甥姪 、高祖父母、玄孫、いとこ、姪孫、配偶者の父母、子供の配偶者、配偶者の祖父母・兄弟姉妹、自分の兄弟姉妹・孫の配偶者、配偶者の曾祖父母・甥姪、おじおば・甥姪・ひ孫の配偶者をいいます。

3−5 申し立てに必要な書類は?

任意後見監督人選任の申立てを行う際に、家庭裁判所に提出する書類は以下のとおりです。

<各家庭裁判所から取り寄せる書類>
・任意後見監督人選任申立書
・申立書附票(申立事情説明書、本人事情説明書、財産目録、親族関係図、受任者事情説明書)

<各市区町村の役所から取り寄せる書類>
・ 本人の戸籍謄本、住民票

<各法務局から取り寄せる書類>
・ 後見登記事項証明書

<その他>
・医師による診断書

その他、ケースによって各家庭裁判所が指定する書類を提出することになりますので、必ず家庭裁判所ごとに必要書類を確認して下さい。

3−6 申し立てにかかる費用は?

申し立てにかかる費用は以下の通りとなります。

<申し立て手数料(収入印紙)>
800円分

<連絡費用(切手)>
3000円分ほど(各家庭裁判所により異なります)

<登記費用(収入印紙)>
1400円分

4 専門家への申し立ての依頼について

上記の後見制度開始の申し立て手続きは、弁護士や司法書士などの専門家に依頼することができます。

専門家によっては、書類の作成のみを依頼することも、提出までのすべてを依頼こともできますので、一度相談してみるのも良いでしょう。

おおよその目安として、後見開始の申し立てにかかる費用は、申し立てにかかる実費とは別に次のような金額となっています。

● 弁護士費用:約20万円〜
● 司法書士費用:約10万円〜

5 まとめ

以上のように、後見制度開始の申し立て手続きは、所轄の家庭裁判所を知るところからはじまり、提出するまでにはけっこうな手間が必要となります。

ですから、まずは所轄の家庭裁判所を調べ自分で書類を取り寄せて作成するか、専門家に相談するかというところがどなたにとっても第一歩になるかと思われます。

いずれにしても、まずは所轄の家庭裁判所のホームページなどから「申し立ての手引き」を入手して一読してみると良いでしょう。

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