成年後見人は財産管理と身上監護の他に、就任時と退任時の仕事があります。
周りの人が認知症になるとあなたも成年後見人になる可能性がありますが、仕事内容をしっかりと理解している人は多くありません。
これから成年後見人になろう、あるいは成年後見人の制度を利用しようと思っても仕事内容が把握できていないと具体的にどうすれば良いのか戸惑ってしまうかもしれません。
今回の記事では、成年後見人の仕事をする上で知っておくべきことから、退任時までの仕事内容を全て網羅できるようになっています。
専門的な立場から一般の方が理解しやすいように、通常業務である財産管理と身上監護からお伝えしていきますので最後までぜひご覧下さい。
目次
1、成年後見人の通常業務
成年後見人の通常業務は財産管理と身上監護の2つに分かれています。
- 財産管理:預貯金の管理や不動産の管理などを行う仕事
- 身上監護:病院での手続きや介護サービスの契約など、安心した生活を送るための仕事
それぞれの具体的な仕事内容については以下の表をご覧下さい。
財産管理とは、本人が所有している不動産や預貯金、株式などを本人の代わりに成年後見人が管理する仕事です。財産と言っても、現金や預貯金だけではなく生命保険や自動車なども財産に含まれます。細かいところでお話をすると、電気・水道・ガスなど生活に必要な支払いなども家庭裁判所に報告をしなければなりません。
身上監護では、本人に介護や看護が必要であっても、後見人が介護や看護をする必要はありません。そこで、介護や看護などに関する法律行為を行うことになります。主に病院では入院の際に必要な手続きを、介護サービスでは施設に入所する手続きを代わりに行います。
以上が大まかな成年後見人の通常業務の内容です。財産管理と身上監護の業務内容については、2章と3章で詳しくご紹介いたします。
2、財産管理
財産管理は単に預貯金の管理をするだけではなく、不動産や株式の管理、さらには納税などの税務処理も行います。
下記の表は財産管理の仕事内容をまとめたものです。
それでは、表の中の詳しい内容を見ていきましょう。
2−1、現金や預貯金などの収支の管理
支出と収入の金額を帳簿に記録します。
本人の財産は本人のために使い、本人の利益になるように管理する必要があります。支出は本人が食材や日用品を購入したレシート、病院までの交通費で200円かかったなど細かい出費を全て帳簿に記録していきます。
・その他の支出の例:家賃の支払い、納税、病院の診療代
収入は年金や家賃収入、給与を全て帳簿に記録していきます。
・その他の収入の例:株の配当金、退職金、土地を売却したときに入る金銭
また、後見人は家庭裁判所に毎年、財産状況を報告します。
帳簿に収支を記録することで、本人のために財産を使っているかを判断することが出来るのです。
2−2、収益不動産の管理
不動産の管理では、本人が行なってきた建物のオーナーとしての業務を代行します。
ここでは本人がアパートやマンションなどの不動産を所有している場合と、自宅を持ち家で所有している場合の仕事内容について触れていきます。
⑴収益不動産を所有している場合
本人がアパートやマンションなどの不動産を所有している場合は、入居者とのやり取りや家賃の回収業務まで幅広い業務を後見人が行います。本人は判断能力が既にないので、自分では不動産管理業務を行えないからです。
後見人が行う不動産の管理業務は次の4つです。
- 入居者とのやり取り
- 家賃の回収
- 建物の修繕
- 環境整備
入居者が家賃の滞納をしたときに催促をして、家賃の回収を行います。建物の外壁が崩れている場合には、業者に連絡して修繕してもらうこともあるでしょう。
また、入居者が住みやすい環境を作ることも大切です。雑草が生い茂っているときには、草むしりや除草剤の散布も必要になります。
本人が不動産を複数所有していると、全てを管理しきれないことがあるので不動産会社に委託するようにしましょう。
⑵本人が自宅を所有している場合
本人が施設に入所しているときは、自宅の管理も仕事の一つです。
自宅を見回って建物の修繕が必要な場合は、業者へ連絡をして住める状態を維持します。本人の認知症の症状が改善されて、施設から自宅に戻るケースもあります。いつでも本人が自宅に戻ってこられるように、自宅の見回りは定期的に行います。
また、施設に入所していてしばらく自宅に帰る予定がなければ、電気や水道は一旦解約しておきましょう。
2−3、株式や有価証券などの金融商品の管理
本人が株式を所有していれば、その会社に残高証明書を毎年郵送してもらいます。(電話をすることで残高証明書を取り寄せることが出来ます)
毎年、家庭裁判所へ財産の状況を報告するので、残高証明書が必要となります。
手形、小切手、商品券はクリアファイルに入れて保管しましょう。それぞれクリアファイルに入れて、種類ごとに分けて保管しておくと紛失などを防ぐことが出来ます。
2−4、納税などの税務処理
税務処理では以下のような税金の納税を行います。
- 固定資産税
- 所得税
- 住民税
税金は本人の銀行口座からの引き落としにしておくと便利です。
私たちが税金を払っているように、本人も税金を支払わなければなりません。しかし、判断能力が衰えていると(特に認知症)税金の払い忘れが起きてしまいます。成年後見人に選任された後には銀行や税務署に、後見人に選任された届け出をします。届け出のときに銀行口座からの引き落としにしておきましょう。
2−5、生命保険の管理
本人が生命保険に加入している場合は、入院や手術などの際に保険会社への手続きを代行します。
生命保険の受け取りの手続きは被保険者(本人)以外では行えませんが、成年後見人の制度を利用していると後見人が手続きを代行できます。生命保険に加入している場合は入院が決まり次第、保険会社へ電話をして入院をする旨を伝えましょう。
保険会社から保険の請求をする書類が届くので、申請に必要な書類を揃えて保険会社へ提出します。書類で生命保険の支払いが承認されると、本人の口座に保険金が振り込まれます。
ただし、生命保険は本人の財産に含まれるので、解約は行えません。本人の財産の処分は成年後見人の仕事に含まれないからです。
※自動車は今後利用することがないのにも関わらず、所有しているだけで費用がかかるので生活費の捻出のためでしたら処分が出来ます。
2−6、自動車の管理
自動車はただ所有しているだけでも税金がかかるので、利用する機会がないのであれば、一時抹消登録をしましょう。
自動車は所有しているだけでも、自動車税と自動車保険がかかってしまいます。本人は既に判断能力が衰えているので、自動車に乗ることができません。そこで「一時抹消登録」という手続きをとると、自動車が廃車扱いになるので自動車税がかからなくなります。
生命保険と違い自動車の売却は「生活費の捻出のため」でしたら後見人が行うことが出来ます。通常の軽自動車や普通車の場合、財産目録の提出の際に自動車の処分をしたことを記載するだけで問題ありません。しかし、高級車のように資産価値のある自動車は後見人だけの判断で売却できませんので、家庭裁判所へ電話をして相談しましょう
また、後見人は移転登録の手続きが可能なので、車の名義を変更することができます。親族で自動車を利用したい人がいるときは、名義変更をして譲り渡しましょう。
3、身上監護
身上監護は本人が病院に入院するときの手続きや、施設探しから入所までの契約などを行う仕事です。
本人は入院のための手続きや、施設の契約内容を理解することが難しくなっています。そのため、不当な契約を結ばれることも少なくありません。(中には施設の入所を断られることもあります)
成年後見人はこうした病院の手続きや、施設への入所の際の手続きを代わりに行なってトラブルを防ぐ必要があります。
下記の表は身上監護の仕事内容をまとめたものです。
では、表の中の詳しい内容を見ていきましょう。
3−1、医療関係の手続き
病院での治療や入院の際の手続きを行います。
- 入院するときに書類の記入と手続き
- 健康診断の申し込み
入院の際の手続きでは入院申込書や入院保証書、個人情報保護に関する同意書の記入をするので本人では手続きが難しいです。
後見人が代わりに手続きを行い、入院のサポートをしてあげることが大切です。
3−2、施設への入所の手続きと監視
本人が施設に入る必要があるときは、以下の3つの仕事があります。
- 施設探し
- 施設との入所契約
- 施設の訪問
本人の状態や財産の状況を見極めた上で施設を探して、入所の契約を本人の代わりに行います。施設見学に本人を同行させ、施設との相性を確かめると入所後も安心して暮らせるでしょう。入所後は定期的に施設を訪問して、本人の生活を確認しましょう。
何か不利益があれば施設に改善を求め、本人が生活をしやすいように努めます。例えば、本人と面談をした際に自宅に帰りたいなどの要望がある場合は、施設に馴染めていない、職員と相性が合わないなどの可能性があります。
3−3、介護が必要になった際の手続き
介護サービスは自宅に訪問してくれる在宅サービス、施設に入所する施設サービスの2種類に分かれます。
利用する介護サービスが決まり次第、問い合わせて申し込みをしましょう。
2つの介護サービスに共通しているのが、要介護認定を受けていないとサービスの利用ができないことです。(稀に利用できるサービスもあるようですが、ほとんどの場合断られてしまいます)
もし、要介護認定を受けていない場合には、要介護の申請を行いましょう。
介護サービス開始までの流れは厚生労働省のホームページに記載されているので、参考にしてください。本人に自宅で介護を受けたいか、施設での介護が良いのかを聞いた上で介護サービスを決めましょう。
4、成年後見人の仕事が始まる前の7つの準備
成年後見人は選任されたあと、通常の仕事が始まるまでに、財産の調査や労基事項証明書の発行の準備が必要です。銀行や法務局に行って書類を提出することもあるので、必要書類の確認もしておきましょう。
4−1、本人やその関係者と話合いをする
成年後見人に選ばれてからすぐに本人とやその関係者と健康状態を改めて確認をしたり、次の3つのことを話合っておきましょう。
- 本人の心身の状態(健康状態や気持ち)
- 本人の意向(どのように生活をしていきたいか)
- 本人の財産状態
以上の3つのことを改めて話合っておくことによって
- 今後病院に行く必要があるのか
- 本人はどのような生活を望んでいるのか
- どのくらいの金額を生活費に回せるのか
などを把握することが出来るのできます。もしも、あなたが家族であれば、意外と心の中で不安に思っていることや財産状態の細かいところまで話を聞いていない可能性もあります。これから後見人として本人の望んでいる生活をサポートするためにも、改めて話合いをしておいた方が良いでしょう。
4−2、本人(または親族)から財産の書類や印鑑を引き渡してもらう
この後にもご説明させていただきますが、財産の書類は、財産目録を提出する際に使います。印鑑は本人の病院や施設への入所、不動産契約の際に不可欠です。
あらかじめ、書類や印鑑を本人から貰っておくと様々な手続きの際に二度手間にならなくて済むので用意をしておきましょう。
4−3、法務局に登記事項証明書の発行をしてもらう
財産の引き渡しが終わった後に法務局へ行き、登記事項証明書の申請を行なってください。この登記事項証明書があれば銀行などの手続きを、本人の代わりに行うことができるようになります。また、郵送で申請することもできます。(東京法務局のみ)
一度、お住まいの管轄している法務局に相談してみましょう。
登記事項証明書のダウンロードはこちら
4−4、財産の調査
後見人に選任されたら財産目録の作成を行い、財産の状況を家庭裁判所へ報告しなければいけないので、家族であっても正確に財産目録を作成する必要があります。
そのため、登記事項証明書が発行できたら、財産調査では次の5つについて調べましょう。
①預貯金や借入金
預貯金は銀行や郵便局へ行き、残高証明書の発行をします。本人の判断能力が低下していると、通帳や銀行のカードを紛失していることがあります。登記事項証明書があれば各銀行で通帳の再発行や、銀行の利用をしているかの確認ができます。
どうしても利用している銀行がわからない場合は、最寄りの銀行へ行って登記事項証明書を提示しましょう。もし本人に借入金があれば契約書で借入先、金額、完済予定日、利息を確認します。借入の契約書は財産目録に添付するので、紛失している場合には借入先に電話をして契約内容の書類を取り寄せましょう。
②不動産
財産目録の提出時に不動産登記事項証明書と固定資産税評価証明書が必要になります。法務局で不動産登記事項証明書の申請をすると証明書を発行してくれます。
また、固定資産税評価証明書は市町村役場で申請書を記入することで発行することができます。
③車などの動産
車は自動車検査証(車検証)を用意します。そのほかの骨董品や絵画、コレクション類などの動産については専門家に価値の鑑定をしてもらい、財産目録へ金額を記入します。
④株や有価証券
株や有価証券を保有している場合は証券会社に電話をして、残高証明書を取り寄せましょう。残高証明書は財産目録に添付して提出します。
⑤生命保険
生命保険に加入している場合は保険証書を用意し、受け取り金額や積立の金額を財産目録に記入します。
4−5、銀行や保険会社などに成年後見人になった届け出をする
成年後見人に就任したことを銀行、保険会社、年金事務所、税務署に届け出をしましょう。
届け出をした際に、大切な書類を本人が間違えて捨ててしまう可能性があるので、今後送られてくる書類は全て成年後見人であるあなたの住所に送ってもらえるようにしましょう。
4−6、財産目録を作成して家庭裁判所へ提出する
成年後見人に選任されてから1ヶ月以内に、家庭裁判所へ財産目録を提出しなければいけません。(財産目録は財産の状態を記録したものです)
例え家族であっても、家庭裁判所は成年後見人による財産の使い込みを防ぐために、財産の状況を確認しておく必要があります。書式は特に決まっていませんが、記入する内容はある程度決まっています。ご自身でExcelなどを利用して作成することもできます。
下記に財産目録の作成例がありますので、参考までにご覧下さい。どうしても1ヶ月以内に財産目録の提出が間に合わない人は、家庭裁判所へ早めに相談するようにしましょう。
財産目録の作成に不安がある方は、裁判所のホームページからダウンロードもできます。
記入方法がわからない方は、見本をご覧ください。
4−7、生活プランを立てて収支予定表を作成する
生活費が月にどのくらいか、税金は年間でいくら支払うかなどを詳細に収支予定表に記録します。収支予定表はある程度の生活プランを立てるためにも必要なことなので、本人と相談をしましょう。
作成後は財産目録と一緒に家庭裁判所へ提出します。
下記に作成例を載せておきますので、参考にしていただければと思います。収支予定表の作成に不安がある方は、裁判所のホームページからダウンロードもできます。
出典:家庭裁判所
5、成年後見人の役目を終えた時の手続き
成年後見人は次の5つの理由によって役目が終了します。
- 本人の死亡
- 成年後見人の辞任
- 成年後見人の解任
- 認知症や精神障害の症状改善
- 成年後見人の欠格事由の発生(後見人としての条件を満たさなくなった場合)
成年後見人は、就任中の財産管理や身上監護だけではなく、役目が終わった後にもいくつか仕事があります。役目が終えた後の仕事が3つありますので、今のうちに知っておくと良いかと思います。
5ー1、財産目録を作成する
今まで作っていた財産目録と同じ書式で、2ヶ月以内に家庭裁判所へ提出をします。
成年後見人の役目が終わると本人の相続人や、次の成年後見人へ財産を引き継ぐ必要があるからです。(本人の後見人をしている場合は、あなたも相続人に含まれているかもしれません)
※本人が亡くなった場合は、死亡診断書のコピーも一緒に提出します。(病院や葬儀会社でもらえます)
5ー2、法務局へ成年後見終了登記を申請する(本人が亡くなった場合)
登記申請書にて成年後見人の役割が終了したことを、法務局に報告します。
成年後見人が解任されたときは家庭裁判所が法務局に報告してくれますが、本人の死亡の場合のみ申請が必要になります。
申請書に必要事項を記入して、死亡診断書を同封のうえ郵送で申請が出来ます。
5ー3、相続人へ財産の引き渡しを行う(本人が亡くなった場合)
本人が亡くなった場合は、今まで管理していた財産を保有する権限がなくなるので、速やかに相続人に引き渡す必要があります。成年後見人を解任されたときは、次の後見人へ財産を引き渡すだけなので難しいやり取りはありません。
引き渡しには以下の2パターンがあります。
なお、遺言書がある場合は遺言書の内容に従って相続、遺贈を行いましょう。
①相続人が複数
相続人が複数いる場合は、相続人同士の話し合いで代表者を決めてもらいます。通常であれば、その代表者に財産を引き渡して、成年後見人の役目が終了します。
しかし、あなたも相続人に含まれている場合は、利益相反行為になってしまうため特別代理人を選任しなければなりません。(後見監督人がいる場合は、必要ない)
このように相続人が複数いる場合は、トラブルで手続きが進まなくなったりしてしまう可能性もありますので、専門家に依頼しましょう。
②相続人が1人
相続人が1人しかいないときは、その相続人に財産を引き渡して成年後見人の役目は終了です。しかし、あなた自身が相続人である場合は、先程と同じように特別代理人を選任しなければなりません。
6、成年後見人の仕事をする上で知っておくと良い7つのこと
成年後見人では、知っておくと役に立つことが7つあります。
いつ成年後見人の仕事が始まっても良いように、今のうちから知っておきましょう。
6−1、帳簿を半年〜1年に1回は家庭裁判所に提出を求められる
帳簿に収支の記録をすることを怠り、適当に仕事をこなしていると家庭裁判所は成年後見人の不正を疑います。
実際に、成年後見人が財産を使い込む事件が起きていて、解任されるケースも多数あります。帳簿への記入を怠ると成年後見人の解任をされる可能性もあるので、忘れずに行いましょう。
6−2、不動産の管理は専門家にお願いをする
家賃を滞納した人への催促をかして、物件の見回りをして修繕箇所を探して…
不動産の管理は何もわからない人が行うと、かなりのストレスになります。あなたが時間に余裕があって不動産を管理できるなら、問題ありません。しかし、自分で管理するのは難しそうだなと思う方は、専門家である管理会社に委託しましょう。
6−3、領収書とレシートを保管する
支出と収入、納税の領収書とレシートは月ごとに保管しましょう。
帳簿に記入するときに支出と収入のズレが出ても、領収書やレシートがあると気づくことができます。支出と収入にズレが出ると本人がお金を使ってしまったのか、後見人が記入を忘れていたのかの見当がつきません。
せっかく本人と相談して立てた生活プランが崩れてしまうので、必ず領収書とレシートは保管しておきましょう。ノートに日付を書いて、のり付けしていくと保管がしやすいのでオススメです。
6−4、株式の取引は出来ない
成年後見人の仕事には、本人の財産の処分は含まれないので株式の取引は出来ません。成年後見人は本人の財産を保護するための制度なので、株式を売却する資産運用は出来ないのです。
しかし、株の暴落が起きた場合には家庭裁判所に相談して、売却することが可能です。迷ったときは家庭裁判所へ相談をしましょう。
6−5、利益相反行為は禁止されている
利益相反行為は後見人にとっては利益であるが、被後見人ととっては不利益になることです。例えば、遺産分割協議において、成年後見人と本人のいずれも相続人である場合が当てはまります。
本人は自分で判断ができないので、成年後見人が相続を優位に進められてしまいます。利益相反行為が認められる場合には、成年後見人の審判が行われた家庭裁判所に特別代理人の申し立てが必要になります。
※後見監督人がいる場合に限っては、特別代理人の選任は不要です。
6−6、本人が所有している自宅の売却はできない
本人が施設に入所していて、自宅に戻る予定がない場合でも自宅の売却は出来ません。財産の処分は後見人の仕事に含まれないからです。
しかし、本人の生活費が不足していて入院や施設費を捻出できない場合には、売却を認められることもあります。
本人の自宅を売却する場合は家庭裁判所に売却許可決定の申し立てを行います。
6−7、相続税対策はできない
成年後見制度は本人の財産を保護するための制度なので、推定相続人の利益を図るためのものではありません。生前贈与を行えば年間で110万円までなら非課税になるので、毎年少しずつ贈与していけば節税になります。
しかし、生前贈与は本人の利益にならないため、成年後見制度では行うことができないので注意しましょう。
7、まとめ
成年後見人は主に2つの仕事があります。
- 財産管理
- 身上監護
いざ成年後見人に就任することになってもスムーズに仕事に取りかかれるよう、ぜひ今後に役立てていただければと思います。
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