後見人制度利用前に知っておきたい!申立に必要な診断書の知識

後見人 診断書

これから後見制度を利用して、ご家族に後見人をつけようと準備されている方にとって、被後見人の判断能力を示す診断書の作成は避けては通れない道です。

ですが、どんな場合にどんな診断書を作成し、どこに提出すればいいのかなど、なかなかわかりにくいですよね。

後見制度は、認知症などにより判断能力が低下した方をサポートするための制度ですので、医師による客観的な診断が必要となります。 

また、診断の内容によって、利用できる制度や類型が異なる点も後見制度の大きな特徴です。 

判断能力別に、どんな種類の制度が適用になるのかを知っておかなければ、後見人をつけて実現しようとしていたことが実現できないなど、意図しない事態に直面することにもなりかねません。

このページでは、後見制度を利用するにあたって、そのような事態に陥らないため、また、すみやかに診断書を作成して提出するために、診断書にかかわる知識をわかりやすく簡潔に解説していきます。

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1. 診断書が必要な理由

後見制度は、判断能力に問題がある方を不当な不利益から守るための制度です。

「判断能力に問題がある」と一口に言っても、まったく何もかもわからなくなってしまった方から、日々の生活には支障がないような軽度の方まで、それぞれ判断能力欠如の度合いには違いがあります。

成年後見制度は、その判断能力の度合いの違いごとに制度が分類されていて、判断能力に合ったサポートが受けられるようになっています。

そのため、成年後見制度を利用する際には、まず後見人が必要な方の今現在の判断能力の程度がどのようなものであるかを家庭裁判所に伝え、その方にはどの制度が適当なのかを適切に判断してもらう必要があります。

そのために提出する書類が、医師による診断書なのです。

ですから、どの制度を利用する際にも、基本的にその方の判断能力の程度がわかる診断書は必要ということになります。

診断書の書式例(Word形式でダウンロードできるようになっています)
診断書の書式例
診断書は、以上のように「判断能力についての意見」として、

□ 自己の財産を管理・処分することができない。
□ 自己の財産を管理・処分するには,常に援助が必要である。
□ 自己の財産を管理・処分するには,援助が必要な場合がある。
□ 自己の財産を単独で管理・処分することができる。

という選択項目、その下に「判定の根拠」として、その判定にチェックを入れた根拠を具体的に示すという書式が一般的です。

ただし、以上は書式の一例であり、家庭裁判所により項目が追加されることなどがありますので、実際に提出する診断書については提出先の家庭裁判所に必ずお尋ね下さい。


2. 制度ごとの判断能力の要件の違い

では次に、制度ごとの違いについてご紹介しましょう。 

成年後見制度には、大きく別けて2つの種類があります。 ひとつは「法定後見制度」、もうひとつは「任意後見制度」です。

法定後見制度は、すでにある程度、判断能力が低下してしまっている人が利用する制度、任意後見制度は、まだ認知症などにかかっておらず判断能力に問題のない方が利用する制度になります。

では、制度ごとに、利用者の判断能力の要件にどのような違いがあるのか詳しく見ていきましょう。

2-1. 法定後見制度の判断能力

すでに判断能力に問題がある方が利用する法定後見制度は、さらに判断能力の欠如が著しい順に「後見」「保佐」「補助」の3つの制度に分類されています。

①後見
後見は、財産の管理や処分が、自分ではできないぐらい判断能力が欠如した状態が、日常的になってしまっている状態の方に適用される制度です。日常生活の買い物などにも支障を来している状態です。

 ②保佐
保佐は、必要最低限の買い物など日常的な生活には支障はないものの、不動産の処分や管理、金銭の貸し借りなどはまったく自分で行える状態にはなく、著しく判断能力が衰えている方に適用される制度です。

 ③補助
補助は、必要最低限の日常生活には支障はなく、不動産の処分や管理、金銭の貸し借りなどもできなくはない状態ですが、それらも誰かに代理でやってもらった方が本人にとってよいのではないかという状態まで判断能力の低下が見られる方に適用される制度です。

2-2. 任意後見制度の判断能力

任意後見制度を利用する際に必要な判断能力の欠如の基準は、おおむね上記、法定後見制度の「補助」が適用される程度の判断能力になります。


3. 診断書はかかりつけの医師に書いてもらう

では次に、診断書をどこで書いてもらうのかを具体的に確認しましょう。

診断書は、基本的にかかりつけの医師に書いてもらいます。とくに家庭裁判所から指定された病院で診断してもらう必要はありません。 

今まで通院していた病院の医師に、それまでの臨床をもとに書いてもらうのが通常ですが、そのような医師がいない場合には、任意の病院で1ヶ月ほど、回数にして2、3回ほど診察してもらってから作成してもらうのが通常になります。 

とはいえ、診断書を書いてもらえるまでの診察の回数については、病院や医師の方針によりさまざまですので、急ぎの場合などには直接病院や医師にその旨を伝え、診断書をもらえるまでの期間を確認するとよいでしょう。


4. 基本的には医師の診療科に定めはない

診断書は上述のとおり、基本的にはかかりつけの医師(主治医)に書いてもらうことになります。その医師の診療科については、とくに定めはありません。

が、本人の精神状態について詳しく、医学的な見地から診断できる医師でなければなりません。 

ですから、精神科や心療内科の医師でなければ、場合によっては診断書を書いてもらえないこともあります。 

そのような場合には、かかりつけの医師に、診断書を作成してくれる精神科等を紹介してもらうか、ご自分で精神科等を探して受診することになりますので、かかりつけの医師や、初診前によく相談するとよいでしょう。


5. 診断書の作成費用

診断書の作成は、各自が実費を支払って行います。

医師による診断書の作成費用は、病院ごとに若干異なりますが、後見制度の申立用の診断書作成費用は、5千円〜1万円程度です。 

費用の額は、一般的には診断書に記載する事項の多寡や文字数などの分量によって決まりますが、病院によって基準が異なります。


6. 診断書が必要なタイミング

診断書は法定後見、任意後見、いずれの制度でも家庭裁判所宛に提出しますが、法定後見制度と任意後見制度では提出するタイミングが異なります。

6-1. 法定後見制度の場合

法定後見制度では、後見、保佐、補助の各制度ともに、制度を利用するにあたってはまず「後見開始の申立て」を家庭裁判所に行い、審判を受ける必要があります。 

診断書は、その申立て時に申立書と一緒に家庭裁判所に提出します。

診断書の有効期限は3ヶ月となりますのでご注意下さい。

6-2. 任意後見制度の場合

任意後見制度の場合には、まず後見人になる方と被後見人になる方が公正役場で任意後見契約を結びますが、この時点では後見人になる予定の人は判断能力に問題がなく、自らの意思で契約を行います。

そして、その後、被後見人になる方が認知症などによって判断能力が低下した際に、家庭裁判所に対して「後見監督人選任の申立て」というものを行い、家庭裁判所が後見監督人を選任したタイミングで後見が開始されます。

任意後見制度では、この後見監督人選任の申立て時に診断書が必要になります。 

この診断書もやはり、有効期限は3ヶ月となりますので注意が必要です。


7. まとめ

以上、診断書の作成から提出までに必要な知識をまとめてみました。

診断書については、まず申立てを行う各家庭裁判所に特定の書式がないかどうかを調べるところからはじめるとよいでしょう。

すみやかに診断書を作成し申立てを行う際の、お役に立てれば幸いです。

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