成年後見人の手続きをスムーズに行うために知るべき必要書類と費用

後見人手続き

成年後見人の手続きをしたくても、中身が複雑で何から始めると良いのかわからなくなっていませんか?

実は、複雑そうに感じる後見人の手続きも1つ1つステップを確認しながら取り組むことで、意外とご自身で簡単に手続きを行うことが出来ます。

ここでは、2つの後見人の手続き方法をわかりやすくまとめて紹介します。この記事を読み終えたあなたは成年後見人の手続きが理解できスムーズに専門家に依頼できるようになるでしょう。どうぞご参考ください。

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1、法定後見人の手続き方法と必要書類

法定後見人の手続きには5つのステップがあります。

法定後見人の手続きは通常でも2ヶ月、長ければ半年もかかる可能性があります。早急に書類を準備をしなければ制度開始がどんどん遅くなってしまいますので、制度を利用することが決まり次第すぐに書類を集め始めましょう。

ここからは、法定後見人の申し立て準備から法定後見人終了時までのステップを、以下にある表に従ってご紹介いたしますので実際の手続きに役立ててください。また、手続きは家庭裁判所で行うので、被後見人(以下本人と記載)の住んでいる管轄の家庭裁判所も調べておきましょう。

※管轄の家庭裁判所の検索はこちらで行えます。後見人の手続きの流れ

1、家庭裁判所への申し立てに必要な書類を用意する

法定後見人の申し立てに必要な書類は、以下の表にまとめました。

 申し立ての必要書類

それぞれの書類について、詳しく見ていきましょう。

①申し立て書:本人以外の人が申請をするときは申し立て書、申し立て付票の2つが必要です。

申請する人が本人の場合は申し立てのみ家庭裁判所へ提出します。

申し立て書のダウンロードはこちら

申し立て付票のダウンロードはこちら

②診断書:被後見人のかかりつけ医に「後見人の手続きで必要だから診断書を書いてほしい」と依頼すると、3,000円〜5,000円で作成してくれます。(費用は医師によって変わるので直接確認してください)

可能であれば初めから精神科に行き、認知症や精神障害の診断を受けることです。被後見人のかかりつけ医が精神科医ではないときは、念のため診断書を出してもらえるのか聞いてみましょう。

③本人の戸籍謄本:本籍地の市町村役場で申請書を記入した後に、役場の職員に提出することで入手出来ます。

提出の際に運転免許証やパスポートなどの本人確認書類の提示を求められるので、予め用意して役場へ向かいましょう。

また、家族以外の人が代理で戸籍謄本を申請するときは、必ず委任状が必要です。本人に委任状を記入してもらい、役場へ行きましょう。

※代わりに行く場合、各市町村の住民票の委任状が必要になります。

こちらから東京都新宿区の委任状のダウンロードが出来ます。

その他の地域の委任状は「戸籍謄本 委任状 〜県」でお調べください。 

④住民票:市区町村役場で申請書を書くことで手に入ります。

その際には本人の運転免許証など(顔写真付き)の身分証明書が必要です。(本人と後見人の2つの住民票が必要です。本人が行けない場合には後見人になる人が代わりに行きましょう)

※本人ではなく代理人が住民票を取得する場合は、各市町村の住民票の委任状が必要になります。

こちらから東京都新宿区の委任状のダウンロードが出来ます。

その他の地域の委任状は「住民票 委任状 〜県」でお調べください。 

⑤本人の健康状態がわかる資料: もし、認知症や精神障害を患ったばかりでまだ申請をしていない場合は、認定されてから後見人の手続きに移りましょう。

法定後見人の制度は「本人の判断能力の低下」が認められないと利用できません。

障害者手帳や要介護の書類があれば、判断能力が低下しているという参考材料になります。

 ⑥本人の財産に関する資料:表に記載されている資料の他にも、下記のような資料があります。

・株式の残高報告書
・負債についての資料(金銭消費賃借契約書、返済明細書)
・収入についての資料(確定申告書、給与明細書、年金額決定通知書)・支出についての資料(各種税金の納税通知書、国民健康保険料、介護保険量の決定通知書、家賃、医療費、施設費の領収書)

財産に関する資料は、家庭裁判所が後見人を選ぶ際に重要な参考資料です。 

⑦本人の登記事項証明書:公証役場で申請書を書くことで登記事項証明書を取得できます。

登記事項証明書は、既に成年後見人の制度を利用していないか確かめるために必要な書類です。 

⑧後見人等候補者身上書:後見人の候補者がどのような人物か判断する資料です。

後見人に立候補する人が記入してください。

書類はこちらからダウンロード出来ます。

 ⑨親族関係図:いわゆる家系図を作成します。

裁判所側が相続人を把握するために提出を求められます。

書類はこちらからダウンロード出来ます。

2、家庭裁判所に書類を提出して申し立てをする

書類が揃い次第、被後見人の所属している地域の管轄する家庭裁判所”(“”外部リンクhttp://www.courts.go.jp/map_tel/)へ電話をして、申し立ての日時を調整します。

申し立てをするときに家庭裁判所の調査官と面接があるので、申し立てする人が電話をすると日時調整がスムーズになります。

法定後見人の申し立てができるのは本人、配偶者、四親等内の家族までなので注意しましょう。

申し立て出来る家族一覧

1親等

父、母、子ども

2親等

祖父、祖母、兄弟姉妹、孫

3親等

曽祖父、曽祖母、ひ孫、おじ、おば、甥、め

4親等

高祖父、高祖母、玄孫、いとこ、姪孫 

3、家庭裁判所で面接を受ける

以下の3名が家庭裁判所の調査官による面接を受けます。

①被後見人
②後見人の候補者
③申し立てをした人(②と同じ人の場合がある)

調査官が詳しい事情を本人や後見人の候補者に聞いたり、本人の親族宛に候補者(後見人)についての話しが伝えられたりします。本人に判断能力があって法定後見人をつける必要がないのに、後見人をつけてしまうと財産トラブルの危険もあるので裁判所は慎重に進めたいのです。※稀に本人に判断能力がどのくらいあるのか、精神鑑定が行われる場合があります。(全体の1割ほどしか行われていません。)

4、家庭裁判所から後見人を選任される(審判)

書類と調査の結果から後見人が選任されますが、後見人の候補者とは違う第三者が選ばれることもあります。(第三者:弁護士や司法書士などの専門家)

例えば、親族からの反対がある場合には、遺産相続のトラブルになり兼ねないと判断されて第三者が選ばれることがよくあります。後見人制度を利用すると、例え親族であっても本人の財産に手出しが出来なくなります。本人の判断能力が衰えているのにも関わらず、反対するということは親族による財産の使い込みがあるのかもしれないと家庭裁判所が判断してしまうからです。

その他の第三者が選ばれる状況は下記をご覧ください。

第三者が選任される状況

(1) 親族間に意見の対立がある場合
(2) 流動資産の額や種類が多い場合
(3) 不動産の売買や生命保険金の受領など,申立ての動機となった課題が重大な法律行為である場合
(4) 遺産分割協議など後見人等と本人との間で利益相反する行為について後見監督人等に本人の代理をしてもらう必要がある場合
(5) 後見人等候補者と本人との間に高額な貸借や立替金があり,その清算について本人の利益を特に保護する必要がある場合
(6) 従前,本人との関係が疎遠であった場合
(7) 賃料収入など,年によっては大きな変動が予想される財産を保有するため,定期的な収入状況を確認する必要がある場合
(8) 後見人等候補者と本人との生活費等が十分に分離されていない場合
(9) 申立時に提出された財産目録や収支状況報告書の記載が十分でないなどから,今後の後見人等としての適正な事務遂行が難しいと思われる場合
(10) 後見人等候補者が後見事務に自信がなかったり,相談できる者を希望したりした場合
(11) 後見人等候補者が自己もしくは自己の親族のために本人の財産を利用(担保提供を含む。)し,または利用する予定がある場合
(12) 後見人等候補者が,本人の財産の運用(投資)を目的として申し立てている場合
(13) 後見人等候補者が健康上の問題や多忙などで適正な後見等の事務を行えない,または行うことが難しい場合
(14) 本人について,訴訟・調停・債務整理等の法的手続を予定している場合
(15) 本人の財産状況が不明確であり,専門職による調査を要する場合

出典:裁判所 後見Q&A

上記の中でも多いのが(1)、(2)(11)(12)の状況です。

(1)の例:父親が認知症で娘と息子がいる場合

娘が後見人の申し立てをすることになったが、息子は反対していて娘とは元から仲が良くない。

このように親族の仲違いがあったり、反対意見があったりすると裁判所は財産トラブルになり兼ねないと判断をします。

(2)の例:2000万円を超える多額な預貯金や株式、手形を複数持っている場合には第三者が法定後見人に選ばれやすいです。

理由として財産の管理が難しいことや、財産の使い込みを防ぐことが挙げられます。

※流動資産は預貯金や現金、手形、株式のように現金化しやすい資産のことを言います。

流動資産と逆の固定資産には、不動産屋や土地が含まれます。(固定資産税のかかるもの)

(11)の例:法定後見人の申し立てをする人の中には、本人の財産を自由に使えるようになると思っている人もいるようです。

申し立てをする時に調査官との面接がありますが、この時になぜ後見人をつけようと思ったのか理由を聞かれます。下記のように本人のことを考えていない理由の場合、第三者が法定後見人に選ばれます。

・今のままだと親の財産に手をつけられない
・今後の生活費にしたい(本人以外の生活費)
・不動産を売却したい(本人の同意は得られていない) 

(12)の例:本人の財産を利用して投資をしようという考えがある場合にも第三者が法定後見人に選ばれます。

本人の財産はあくまでも本人のためにしか使えないので、自分のために使おうとしていると法定後見人には選ばれません。内閣府の平成28年調べによると親族が選任されたのは全体の約29.%、第三者が全体の約70.%でした。

出典:内閣府

後見人による財産の使い込みなどの不正が後を絶たないので、裁判所が親族を選任するのをためらうケースが増えているのです。

5、法定後見人に選ばれた通知が来て後見人が開始

後見人開始

法定後見人に選ばれると、裁判所から審判書謄本が届きます。審判書謄本を受け取ってから2週間ほどで審判が確定し、裁判所から登記番号を知らされます。

この登記番号(審判確定から約1ヶ月後に届く)を、登記事項証明の申請書に書いて法務局に提出すると登記事項証明書という後見人の証明書が手に入ります。そしてやっと正式に法定後見人として認められるのです。

ここまでが実際に法定後見人としての仕事がスタートするまでの手続きです。

※審判書謄本は裁判官が下した判決を記載した書類の写しです。

登記事項証明書と共に、後見人であることの証明書になります。


2、法定後見人選任後の知っておくべき手続き

法定後見人の制度を利用するための手続きは終わっていますが、まだ行うべき手続きが2つ残されています。

・法定後見人の報酬を家庭裁判所に申し立てる
・法定後見人としての業務が必要なくなった場合の手続き(本人が亡くなるまたは、認知症が改善される)

どういったことなのか、それぞれ見ていきましょう。 

1、法定後見人の報酬を家庭裁判所に申し立てる

報酬は家庭裁判所へ申し立てをすることで、月額約2万円分をまとめて受け取れます。(約1年後)

法定後見人になると半年〜1年に一度は財産目録(財産の支出などの記録)や収支予定表(生活プラン)を家庭裁判所へ提出します。1度目の提出の際に報酬の申し立てをして、家庭裁判所が財産の金額と照らし合わせて報酬額を決定します。もし管理する財産が高額な場合(1000万円〜5000万円)には、報酬が5〜6万円になることもあります。 

2、法定後見人としての業務が必要なくなった場合

本人が亡くなったり、認知症が改善されたりして後見人の業務が必要なくなった場合も手続きが必要です。法定後見人は家庭裁判所へ後見人の業務が終了した報告書と、財産目録を提出します。

報告書と財産目録はこちらからダウンロード出来ます。

報告書と財産目録を提出した後、法務局に後見終了の申請を行います。法務局への申請は郵送で行えるので、法務局に行く必要はありません。

申請書のダウンロードはこちら


3、任意後見人の手続き

任意後見人は法定後見人とは違って、本人の同意が必要な契約になるので手続きが少なくて済みます。

法定後見人では財産の使い込みが不安視されますが、任意後見人は本人が信頼した人を指名しているのでその心配が少ないのです。書類は申請の前に早めに準備しておきましょう。以下の表は、任意後見人を申し立てる際に必要な書類です。 

任意後見人の必要書類

①申し立て書

ダウンロードできる裁判所のホームページはこちら

申し立て書付票はこちらでダウンロードできます。

②申し立て事情説明書

ダウンロードできる裁判所のホームページはこちら 

③財産目録

財産目録は決まった書式がないので、自分でExcelなどで作成しても問題ありません。記入例を見ながら作成しましょう。財産目録

④本人に関する書類

被後見人である本人の書類を集めます。次の4つの内、1つを用意しましょう。

・戸籍謄本
・住民票
・印鑑登録証明書
・運転免許証もしくはパスポート

印鑑登録証明書は各市町村の役場で申請すると手に入ります。 

⑤後見登記事項証明書

こちらのサイトからダウンロードができます。ダウンロードした申請書に記入して、お近くの法務局へ提出してください。

⑥任意後見契約公正証書の写し

公証役場で任意後見契約公正証書を作成します。任意後見人を家庭裁判所へ申し立てる時に任意後見契約公正証書の写しが必要になるので、公証役場の職員へ写しをもらえるように話してください。

1、支援してくれる人と話し合いをする

いざ本人の判断能力が低下したときに、どのような仕事を任せたいかの話し合いを行なってください。任意後見人は、話し合いで決めた仕事内容を実行していくことになります。例えば、以下の3つのことを仕事内容として決めることが出来ます。

・施設に入るならあの施設が良い
・生活費は預貯金の中から毎月円を当ててほしい
・病気になったら病院にお世話になりたい

法的に実現可能な範囲でしたら仕事内容を決められますが、法律の知識がないと難しい内容です。事前に法律の専門家(弁護士、司法書士)に相談することをオススメします。

2、公証人役場で任意後見契約の公正証書を作る

話し合いで決めた契約内容を元に、公証人役場(遺言などを作成する公的機関)で任意後見の契約を結びます。この任意後見契約をせずに判断能力が衰えてしまうと、法定後見人しか申請ができなくなります。(本当に頼みたい人に後見人になってもらえなくなる可能性があります)

公証人役場は全国に約300箇所あるので、最寄りの公証人役場を探して手続きしましょう。

※公正証書は公証人役場(法務省に属する役所)で作られる公文書です。高い証明力を持ち、法的な効力があります。

以下の表は公証人役場で、任意後見契約を行う際に必要な書類です。

公証役場での必要書類

①本人に関する書類

以下の4点が必要になります。

  • 戸籍謄本
  • 住民票
  • 印鑑証明書
  • 運転免許証

②任意後見人になる人の書類

以下の3点が必要になります。

  • 住民票
  • 印鑑登録証明書
  • 運転免許証

3、任意後見監督人の申し立てする

本人の認知症の症状が確認でき次第、任意後見人になる人が家庭裁判所へ任意後見監督人の申し立てをします。

用意した書類を郵送して申請することが出来るので、お住いの管轄の家庭裁判所に郵送することがオススメです。(申し立ての際には予約は不要なので、直接家庭裁判所へ行って書類を提出することも出来ます。)

この任意後見監督人がついて初めて任意後見人としての役割がスタートします。

※任意後見監督人は任意後見人が本人と契約をした仕事内容を、しっかり行なっているかの監督をします。 


4、後見人の手続きにかかる費用

後見人(成年後見人)は申請時に若干の費用がかかります。

ここでは自分で手続きをする場合の費用と、弁護士や司法書士に依頼した場合の費用を表にしてご紹介していきます。

1、自分で行う場合の法定後見人の手続きの費用

  後見人の費用

2、自分で行う場合の任意後見の手続きの費用

 任意後見人の費用

3、専門家に頼む場合の法定後見人の手続きの費用

専門家に手続きを依頼すると、20万円前後の費用がかかります。後見人関係の費用は法律で決まっているわけではなく、弁護士や司法書士が決められます。

そこでいくつかの弁護士事務所、司法書士事務所のおおよその費用を調べたので、参考にしてください。地域によって対応できる弁護士事務所も変わるので、大体の目安にしていただければと思います。 

専門家に頼んだ場合の後見費用

4、専門家に頼む場合の任意後見人の手続きの費用

任意後見人の手続きは簡単なので、弁護士などに依頼することはあまりおすすめできません。自分で手続きをすると費用は2万円前後で済みますが、弁護士や司法書士に依頼すると15万円前後もかかってしまうんです。

予算に余裕のある場合は依頼しても良いですが、自分で手続きする5倍くらいの費用がかかるので、出来れば自分で手続きをしましょう。以下の表は、任意後見人の手続きを弁護士事務所に依頼した場合の費用をまとめたものです。

専門家に頼んだ場合の任意後見費用


5、まとめ

後見人の手続きや必要書類、費用についてご紹介致しましたが、ご理解いただけたでしょうか?

手続きに煩わしさを感じたのなら、専門家に依頼して任せましょう。また、認知症になる前や軽度の認知症の場合は家族信託がおすすめです。認知症になってから対応しようとすると、本人が亡くなってからではないと財産を動かせません。家族信託を行なっていれば信託の財産を動かして、医療費などを捻出できます。

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