成年後見人の報酬はなぜ増減する?基準と報酬相場を徹底解説!

後見人 報酬

ご家族にこれから後見人をつけようとされている方や、ご自身がご家族の後見人になろうとされている方が一番気になることは、「後見人の報酬」についてではないでしょうか。

「後見人の報酬額はいくらぐらいなの?」
「報酬はどのように支払われるの?」
「なぜ報酬額が増えているか?」
「弁護士や司法書士には特別に高い報酬を支払わなければならないの?」

など、疑問点はいくつもあるでしょう。

また、後見人の報酬をめぐっては、一般的に考えられる上記のような疑問点のほかにも、後見制度そのものの問題点、制度設計の不備に端を発した、一般の方には思いもよらないような注意すべき点があります。

それを前もって知ってしまうと、そもそも後見制度の利用をやめたほうがいいケースもあることがわかるでしょう。

このページでは、そのような観点から、後見制度を賢く利用し、または利用を避けていただけるよう、後見人の報酬についての基礎知識から、後見人の報酬をめぐる実情まで、3つのポイントに絞って詳しくご紹介したいと思います。

1.後見人の報酬額は月2〜9万円

後見人の報酬は、被後見人の財産の中から、家庭裁判所が決めた額を、後見人が自分で引き出すことで支払われます。

被後見人のご家族の方は特にやることはありませんが、ご家族の財布から支払われる出費ということで、その相場が非常に気になるところですよね。

では、その相場について以下に詳しく見ていきましょう。

任意後見制度 法定後見制度
後見人の報酬(基本報酬) 契約によって決定
(目安:月額2〜6万円)
月額2〜6万円
後見人の報酬(付加報酬)
身上監護の付加報酬
財産管理の付加報酬
契約によって決定
(目安:月額2〜6万円)
基本報酬の50%まで
数十万〜百数十万円
後見監督人の報酬 月額約2万円 月額1〜3万円

(1)任意後見制度の報酬は計2〜8万円

①報酬額は契約で変わる(相場約2〜6万円)
任意後見制度の場合の後見人の報酬については、任意後見契約を行う両者(被後見人と後見人になる方)の話し合いによって決められます。

無報酬という選択もとうぜん可能ですが、報酬を支払う契約を結んだ場合には、その通りに契約者どうしで履行すればよく、家庭裁判所に申立てを行い、審判を受ける必要はありません。

報酬を支払う場合には、おおよその目安として法定後見制度の報酬額である月額2〜6万円ほどになります。

ただし、後見人が専門家であるかどうかや、財産管理の複雑さなどによってあくまでも双方納得の行く金額で決定し、契約することとなります。

②後見監督人の報酬は月約2万円
それから、任意後見の場合には必ず後見監督人がつけられることになるため、後見監督人に対して報酬が発生します。

後見監督人の報酬は、被後見人の財産から支払われることになりますが、こちらは家庭裁判所への申し立てが必要で、報酬の額についても職務内容から家庭裁判所が決定します。

おおよその目安としては、月額2万円といったところです。

(2)法定後見制度の報酬は合計月3〜9万円

法定後見制度の場合には、後見人が被後見人の親族であるか、弁護士などの専門家であるかを問わず、後見人が「報酬付与の申立て」を行うことで家庭裁判所が決定した金額が被後見人の財産から支払われることになります。

つまり、後見人の報酬は、後見人自身が報酬を望み、申立てを行うことによって家庭裁判所がその後見人に見合った報酬額を決定し、被後見人の財産のなかから支払われることになるわけです。

ですから、この申立てを行わなければ報酬の受け取りを辞退したことになります。

後見人が親族である場合には、この申立てを行わないことで、報酬の受け取りを辞退するケースが一般的となっています。

また、後見人の報酬は「基本報酬」と「付加報酬」とに別れていて、前者は月々の報酬、後者は特別な後見行為を行った際に発生する臨時の報酬です。

では次に、それらを詳しく見てみましょう。

①基本報酬:財産額に応じて毎月発生するもの(月2〜6万円)
基本報酬は、被後見人の管理財産の額により、おおむね次のような相場となっています。

管理財産額が1,000万円以下 月額2万円(年額24万円)
管理財産額が1,000万〜5,000万円 月額3〜4万円(年額36〜48万円)
管理財産額が5,000万円以上 月額5〜6万円(年額60〜72万円)

なお、以上については成年後見、保佐、補助の類型を問わず同額となっています。

また、後見人が複数いる場合には、上記の金額を後見人の人数で分割し、それぞれ支給されます。

②付加報酬:特別な行為を行ったときに発生する報酬
付加報酬については、「身上監護の特別な行為を行った場合」と、「財産管理の特別な行為を行った場合」とに受けられる報酬に大別され、それぞれ家庭裁判所が金額を決定します。

②-1 身上監護の付加報酬は基本報酬の50%が上限
身上監護の特別な行為を行った場合というのは、例えば次のような場合をいいます。

・被後見人がいくつもの不動産を所有していて、その管理が複雑である場合

・親族間に意見の対立やもめごとがあって、それらを調整しなければならない場合

・後見人等が不正行為を行ったことにより新たな後見人が前任者の後始末などにあたった場合

これらの場合には、基本報酬額の50%までの範囲で臨時的、または定期的な報酬が発生します。多くても約3万円になります。

上記のうち、定期的に発生する行為については、その行為が行われるたびに報酬が発生します。

毎月発生する行為については、家庭裁判所の裁量で基本報酬に上乗せして毎月支払われることになります。

②-2 財産管理の付加報酬の相場は数十万〜百数十万円
それから、財産管理の特別な行為を行った場合についてですが、これはある特殊な状況を受けて被後見人の財産が増えることになった場合で、その代表的な行為の例は次のとおりになります。

・訴訟や調停、示談などの賠償金や示談金などの受け取りにより、財産が増えた場合

遺産分割協議で資産を取得し、財産が増えた場合

・保険金請求により保険金を受け取り、財産が増えた場合

・不動産の売却や管理収入を受け取ったことで財産が増えた場合

以上のような場合には、その財産が増えた金額に応じて臨時的な報酬が発生するわけです。

相場としてはおおむね数十万円から百数十万円といったところです。

③後見監督人等の報酬(相場:月1〜3万円)
また、親族の方が後見人になれたとしても、家庭裁判所の裁量で監督人がつけられることがあります。

この場合にもやはり監督人に対して報酬が発生することになり、成年後見監督人、保佐監督人、補助監督人の報酬の目安は共通して以下の通りです。

管理財産額が5000万円以下 月額1〜2万円(年額12〜24万円)
管理財産額が5000万円超 月額2万5000〜3万円(年額30〜36万円)

2.法定後見制度の後見人の報酬が支払われるまでの流れ

法定後見人への報酬は、後見人の1年間の働きに対して家庭裁判所が報酬額決定の通知をし、被後見人の口座から、後見人が自分で報酬額を引き出します。
従って、被後見人やそのご家族がすることは特にありません。もし、報酬額が高いのではとの疑問がある場合は家庭裁判所に相談し、後見人の活動報告書を確認することが可能です。 

以下では後見人になった方が、どのような手続きを行えば良いかをご説明します。

後見人の手続き

法定後見制度における後見人の報酬は、後見人が家庭裁判所に「報酬付与の申立て」を行い、審判を受けることで報酬が支払われることになります。

この手続きについては親族後見人であろうと専門職後見人であろうと違いはありません。

なお、任意後見制度においては報酬の支払い時期などに関しても任意に契約し、支払いを行うことができます。

また、任意後見、法定後見の両制度において、後見監督人が報酬を受け取る場合についても同じ手続きとなっています。

ちなみに、親族後見人が報酬を辞退する際には、この申立て手続きをしないことで辞退の意志を示すことになります。

(1)基本報酬は年に1度、付加報酬は都度申し立てる

申立てを行う時期は、基本報酬については、後見人が年に1回家庭裁判所に対して行うことになっている後見事務報告に合わせて申立てを行います。

付加報酬についてはその行為が行われた都度申立てる必要があります。

(2)報酬の支払いは後見開始から約1年後

上述のとおり、報酬付与の申立ては年に1回行われる後見事務報告に合わせて行われます。

後見事務報告が行われるのは、通常、後見の開始から1年後です。つまり、その1年間の後見事務について家庭裁判所に報告し、その後見事務に見合った報酬であると家庭裁判所が認めた金額が支払われるわけです。

具体的には、報酬付与の申立が行われたあと、家庭裁判所が報酬額を決定して審判を下し、それを後見人に通知することで後見人に報酬を受ける権利が生じます。

この権利は、通常、被後見人の預金通帳などの管理を行っている後見人自身によって、被後見人の預金から後見人の預金口座へ振り込まれることによって行使されます。

(3)具体的な手続き

具体的な手続きとしては、次の書類を家庭裁判所に提出することで申立てます。

  • 報酬付与申立書
  • 申立事情説明書
  • 82円分の郵便切手
  • 付加報酬を求める場合にはそれに関する資料
  • 後見事務報告書(後見監督人の場合は監督事務報告書)
  • 預金通帳の写し(後見監督人の場合には必要なし)
  • 財産目録
  • その他裁判所が提出を求める資料

また、申立書には800円分の収入印紙を貼付する必要があります。

3.後見人の報酬についての知っておくべき注意点

では次に、以上のような後見人の報酬に関する、重要な注意点について詳しくご紹介しましょう。

これらの注意点は、法定後見制度に関するものになりますので、これから法定後見を利用しようとお考えの方はとくにご注意下さい。

(1)そもそも親族が後見人になれなくなってきている

通常、ご家族に後見人をつけようとお考えの場合、その方の財産状況や家族構成など、家族の内状をよく知る親族を後見人にしたいと考え、そうできるものと思って法定後見制度を利用するケースが多く見受けられます。

ですが、法定後見制度では年々、親族が後見人になりにくくなっています。

内閣府の調べによると、平成12年には親族後見人は全体の90%超を占めていましたが、平成27年には約30%にまで減っています。70%は専門職後見人です。

これは、親族後見人による財産の横領が頻発したためで、家庭裁判所が厳しい目を光らせるようになったことから、後見開始の申立て時に、後見人の候補者として親族の氏名を書いても家庭裁判所が却下するケースが増えていることを示しています。

そして、親族が後見人になれないということは、家庭裁判所が選んだ、見知らぬ弁護士や司法書士の専門職後見人がつくことになり、その後見人に、年間数十万円規模の報酬が発生することを意味します。

親族が後見人になることを想定していると、報酬は発生しないものと考えていることが多く、その場合には、とつぜんそのような多額の費用を支払わなければならない状況に陥るわけです。

また、第三者が後見人に選任されると、その後見人に被後見人の方の預金通帳などすべての財産を没収されるようなものですので、親族の意思とは関係なく毎月の基本報酬が確実に被後見人の財産から引かれるということになります。

(2)後見人の報酬は被後見人の死亡まで支払い続けなければならない

後見人の報酬は、基本的に後見が終了するまで払い続けることになります。

後見が終了するのは、後見の必要がなくなったとき(例えば、認知症の場合には、認知症が完全に治癒し判断能力が回復したとき)か、または被後見人が亡くなったときです。

後見開始の申立てを取り下げることはできますが、この場合、家庭裁判所の許可を得る必要があり、許可を得るためには、認知症が完全に回復したなどの相当の理由が必要なのです。

報酬を払わなければいけないことを知らずに申立ててしまったといったような理由では許可は得られません。

また、制度上、その後見人の人となりや仕事ぶりが気に入らないなどの理由では、不服申立てすらできないことになっています。

ですから、一度後見が開始されると被後見人の方が亡くなるまではほぼ確実に毎月の基本報酬が支払われ続けることになります。

仮に、被後見人の財産額が1千万円だったとして、10年間、後見人に毎月2万円の基本報酬を支払い続けた場合、財産総額のおよそ4分の1の240万円が後見人の報酬に消える計算となります。

(3)後見人の仕事量が見合っていなくても報酬を減額することもできない

上述のとおり、後見人の基本報酬額は被後見人の財産の額を基準に決められることになっています。

つまり、後見人の仕事量とは関係なく毎月一定の金額が支払われるわけです。

ですから、後見人は仕事が少なければ少ないほど得をするということになります。

このような制度となっているため、しっかり仕事をするかどうかはその専門職後見人の良心に委ねられている状況にあります。

実際に、毎月一度、生活費を振り込んでくるぐらいで、ほとんど何の仕事もせずに報酬を受け取り続ける専門職後見人もおり、トラブルに発展するケースも少なくありません。

その場合でも、被後見人の親族の側から報酬を減額することもできませんし、後見人が不正を働くか、著しい不行跡を行うかしない限り解任することもできない決まりになっています。

不正とは、財産を横領するような違法行為をいい、著しい不行跡とは、立場上ありえない暴言を吐くなどの行為をいいます。

 

以上のように、現行の法定後見制度には制度設計に不備が多く、後見人の報酬が支払われるシステムにも、ご家族が納得の行かない点が非常に多く存在します。

それがきっかけで多くのトラブルや事件が発生しているという点は、ぜひ抑えておいて下さい。

4.まとめ

以上のように、後見人の報酬をめぐっては、とくに法定後見制度においてさまざまな問題点が存在しています。

一度この制度を利用すると、後見人の権限が強いため被後見人の身の回りの世話をしている親族の方々は、どうすることもできない状況に陥ってしまうのです。

とくに報酬の授受をめぐっては長期的に出費がかさむことで、ご家族にとっては非常な心労にもなりかねません。

ですので、制度利用自体を慎重に考える必要があることを最後にお伝えしておきたいと思います。

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