これだけは押さえておきたい自筆証書遺言書の書き方、6つのポイント

遺言書の書き方

『遺言書』と聞いてなんとなくはその内容をイメージできる方は多いかもしれません。しかし、実際に何をどのように書けばよいのか、どのように残せばよいのかわからないという方が多いと思います。

事実、遺言書には最低限守らなければならない書き方、ルールがあります。言い換えれば、正しい書き方で、有効な遺言書を残しておかないと、遺言書として法的に認められないのです。

そうならないためにも、今回は、自分で遺言が可能な自筆証書遺言の書き方のポイントをご紹介いたします。遺言書の書き方をこの記事で学ぶことで、残される家族にご自分の想いを確実に伝えられるようにしましょう。

1. 遺言書を書くための事前準備

遺言書を書く事前準備として財産目録を作成しましょう。

遺言書を書くことで、自身の財産を残された家族にトラブルなく相続することができます。そのために事前にプラスの財産・マイナスの財産を正確に把握しておくことが重要です。

次の表は、一般的な相続の対象になる財産の一覧です。まずは、それぞれの財産に関する情報を集めることがから始めてみましょう。

たとえば、自宅の土地、建物に関する情報は、法務局で登記事項証明書を取得する、預貯金、有価証券、保険に関する情報は、取引のある銀行、証券会社、保険会社に口座情報、契約状況を問い合わせることが必要になります。

そして、情報を整理して財産目録を作成することができたら、誰に何を相続させるのかじっくり考えます。

財産目録
(出典:「遺言の書き方と相続・贈与」比留田薫(主婦の友社)より一部抜粋・改変)

2. 自筆証書遺言書の書き方6つのポイント

遺言書の書き方のポイントをご説明する前に、そもそも遺言書にはどのようなことを書くことができるのでしょうか?

答えはどんな内容も書くことができます。と言っても当然、法律に反する内容は無効になります。

そこで、次の法的に効力の遺言書とするために、以下の3つの項目について記載するようにしましょう。

  1. 身分に関する項目・・・子の認知や未成年者の後見人、後見監督人の指定
  2. 財産の処分に関する項目・・・財産の遺贈(相続人以外に財産を贈与すること)、財産の寄付、信託の設定
  3. 相続に関する項目・・・相続分の指定、遺産分割方法の指定、特別受益の持ち戻しの免除(相続分から差し引かれる生前贈与や遺贈などによる特別受益を考慮することを免除すること)、相続人の廃除、祭祀継承者の指定など

また、ご自分で遺言書を書く場合には、その内容が法的に無効にならないよう特に注意が必要です。遺言書の書き方には一定の要件が定められており、それに従わないと法的に無効となってしまいます。

では、自分で遺言書を作成する場合、具体的にどのようなことに注意すればよいのでしょうか?

本人だけで遺言が可能な自筆証書遺言の書き方の6つのポイントについて次のサンプルを見ながら確認していきましょう。

遺言書の書き方

2-1. 必ず全文を自筆で書く

自筆証書遺言は、文字通り全文を自筆で書かなければなりません。ワープロで作成することや代筆、音声テープやビデオ録画による遺言は無効となってしまいます。

用紙や筆記用具の制限はありませんが、用紙については、家庭裁判所の検認時にコピーをとることからA4B5サイズが適当です。また、筆記用具については、改ざんを避けることから鉛筆は避け、万年筆、サインペン、ボールペンなどを使いましょう。

遺言書には決まった書き方、書式はありませんが、誰に何を相続させるのかわかりやすいように箇条書きにするなど財産ごとに項目を立てて書くことをおすすめします。

次にご紹介するような遺言書キットも市販されていますので、一度手にとってみるのも良いでしょう。

コクヨ 便箋 遺言書キット 遺言書虎の巻ブック付き LES-W101

※裁判所の検認とは
公正証書遺言を除く遺言書(自筆証書遺言・秘密証書遺言)は、遺言者の死後、遺言書を家庭裁判所に提出して「検認」を受けなければなりません。また、封印のある遺言書は、家庭裁判所で相続人の立会いのもと開封しなければならないことになっています。検認は、相続人に対し遺言の存在およびその内容を知らせるとともに、遺言書の形状、加除訂正、日付、署名、押印など、遺言書の内容を明確にして遺言書の偽造や変造を防止し、遺言書をそのままの状態で保存するための手続です。

2-2. 必ず作成生年月日を書く

遺言書を作成したら必ず作成日付を書きましょう。

日付は『平成○年○月○日』、『2018年○月○日』のように、西暦、元号、いずれも構いませんが、『平成○年○月』や『平成○年○月吉日』のように具体的な日付を特定できない書き方では無効になってしまいまので注意しましよう。

2-3. 必ず押印する

自筆の署名に加えて忘れずに押印します。押印に使用する印鑑は、実印に限らず認め印、拇印でも良いとされていますが、本人が作成したことをより明確にしてトラブルを避けるため、できれば実印を使用したほうが良いでしょう。 

また、次にご説明するように遺言書の訂正を行う場合や、封筒に入れて封をする場合には、署名・押印に使用した印鑑を使用しなければならないことにも注意しましよう。

2-4. 訂正は法的に定められた方法で行う

内容を訂正、加筆、削除する場合には、法律に定められた方法によるものでなければ、無効となってしまいます。

例えば、訂正を行う場合には、次のような方法によらなければなりません。(あくまで一例でほかにも有効な訂正方法はあります。)

  1. 訂正する箇所を二重線で消し、訂正後の文字をその近くに記入します。(二重線で消す時にはもとの文字が読めるように消すこと)
  2. 訂正した箇所に押印します。(印鑑は署名・押印に使用した印鑑を使用すること)
  3. 訂正箇所の欄外(または遺言書の最後)に、○字削除、○字加入と記入して、遺言者の署名も記入すること)

一字を訂正する場合でも法律に定められた方法によらなければ無効となってしいますので、訂正の方法に自信がなければ、最初から書き直すことをおすすめします。

遺言書の修正

2-5. 不動産は登記事項証明書のとおりに記載する

『自宅を妻に店舗を長男に相続させる』というような書き方では、遺言者の意思は伝わりますが財産の所在を特定することができません。

そこで、土地、建物については、地番、家屋番号まで登記事項証明書の通りに記載しましょう。

登記事項証明書の請求方法については、下記の千葉法務局のページをご覧ください。こちらは、千葉での証明書の請求方法について書かれていますが、全国的に同様の請求方法となりますので、参考にしてください。各都道府県の法務局の所在・管轄についてはこちらの法務局のホ-ムページにて確認できます。

不動産登記事項証明書の請求方法について

2-6. 預貯金、株式は特定できるように記載する

預貯金については、金融機関名・支店名・口座番号、全額ではなくその一部を相続させるのであれば金額まで正確に記載します。

記載する財産に関しては相続したい財産について全て書くようにしましょう。明確に誰に相続するか決めていないものは記載をしなくても構いません。

万が一、口座番号が一桁間違っている場合、トラブルのもとになりかねませんので注意して記載しましょう。

3. 注意事項

3-1. 封筒に入れて封印する

遺言書は必ずしも封筒に入れて封印する必要はありませんが、秘密を守るためや改ざんを防ぐためにも封筒に入れて封印することをおすすめします。その場合、封印に用いる印は署名・押印に用いた印鑑を使用します。

さらに、封筒の表面には『遺言書』や『遺言書在中』など中身が遺言書であることがわかるように書き、裏面には、遺言の作成年月日、遺言書の氏名と押印をします。

また、自筆証書遺言は、本人の死後、家庭裁判所の検認を受けなければなりません。ですから遺族が勝手に開封してしまわないように封筒の裏面には『本遺言書は、遺言者の死後、未開封のまま、家庭裁判所に提出のこと』のように書いておきましょう。

遺言書の封印

参考:「遺言の書き方と相続・贈与」比留田薫(主婦の友社)

3-2. 遺言書の内容は、遺留分に注意する

遺言書を書くときに注意が必要なのが、遺留分に関する配慮です。

例えば、特定の相続人や第三者に全ての財産を譲るといった内容の遺言であった場合、遺言の通りに相続すると本来は遺産を相続する権利を有する人が全く受け取れないことになってしまいます。

つまり、遺言書の内容によっては、配偶者や子などの遺族が、法定相続人としての権利を侵害されることがあるのです。

そのような場合に民法では、遺族の法定相続人としての権利や利益を守るために、遺族が相続できる最低限度の相続分を遺留分という形で規定しています。もし、遺留分を侵害する内容の遺言書の場合、侵害された相続人は贈与または遺贈を受けた相手に対して財産の返還を求める権利があります。(遺留分減殺請求権)

ですから、相続のトラブルを避けるためにも遺言書の内容は遺留分に十分配慮したものにしなければなりません。

なお、遺留分が認められているのは、被相続人の配偶者、直系卑属(子、孫、ひ孫など)、直系尊属(父母、祖父母、曽祖父母)についてだけで、被相続人の兄弟姉妹には認められていません。

また、減殺請求の対象には生前贈与も該当することには注意が必要です。

法定相続人 全体の遺留分 相続人それぞれの遺留分
配偶者のみ 1/2 1/2
配偶者と子供 1/2 配偶者1/4、子供1/4
配偶者と父母 1/2 配偶者1/3、父母1/6
配偶者と兄弟姉妹 1/2 配偶者1/2、兄弟姉妹なし
子供のみ 1/2 1/2
父母のみ 1/3 1/2
兄弟のみ なし なし

3-3. トラブルを防ぐために相続の理由を明記する

なぜその人にそのような配分で財産を残すのか、その理由を明記することで無用なトラブルを防ぐことができます。

例えば、お世話になった人など親族以外の第三者に財産を送る場合、その理由と遺言執行者を明記することで確実に遺言が執行されるように伝えることができます。

また、遺言書を作成した時点で、遺言者に遺言書の内容を理解して作成する能力があったかどうか、遺言能力の有無が問われる場合(代表的な例として認知症で遺言を行う能力がないと医学的観点から判断された場合)、その遺言は無効となる可能性があります。

そのような場合でも、財産の配分について、具体的かつ合理的な説明が明記されていれば、遺言を書いた時点の遺言能力の有無について、不要なトラブルを防ぐことが出来ます。

3-4. 遺言書を書き直す場合は、全て作成し直す

民法では、「前の遺言と後の遺言が抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす」(民法1023条)と規定しています。

つまり、遺言書が複数ある場合は、前後に書かれた同一の内容(抵触する部分)については、最も新しい日付のものが有効になるということで、前に書かれた遺言書の内容すべてが無効となってしまうわけでないことに注意が必要です。

ですから、遺言書を書き直す場合は、混乱を避けるために全部を作成し直して、不要になった遺言書は確実に廃棄することをおすすめします。

4. 自筆証書遺言以外の遺言の残し方

これまで自筆証書遺言の書き方のポイントをご説明してきましたが、ひとくちに遺言書といってもいくつかの種類があります。

大きく分けて普通方式と特別方式がありますが、ここでは通常使われる普通方式について見ていきたいと思います。普通方式の遺言には次の3つの方法があります。

  1. 自筆証書遺言・・・本人が自筆で全文を書く遺言書。費用や証人がいらず内容も秘密にできるが、内容によっては無効となる可能性や、紛失や偽造、改ざんの恐れがあり、裁判所の検認が必要。
  2. 公正証書遺言・・・公証役場で、2人以上の証人の立ち会いのもと公証人が口述筆記して作成する遺言書。費用がかかり、遺言の内容は秘密にできないが、死後、遺言書が発見されないことや偽造や改ざんの恐れがなく、家庭裁判所の検認も不要。
  3. 秘密証書遺言・・・内容を秘密にしながら存在を明確にできる遺言書。公証人と2人以上の証人が必要であり、内容によっては無効となる可能性や、紛失の恐れがあり、家庭裁判所の検認も必要。

本記事では、自筆証書遺言書の書き方を説明してきましたが、もう一度、自分にとって適切な遺言書について考えてみましょう。

5. まとめ

ご紹介してきたように自筆証書遺言の書き方の基本は決して難しいものではありません。

しかし、少しの不備で遺言は無効となってしまいます。あなたのご家族への想いが無駄になるばかりか、不要なトラブルのもとになりかねませんから、事前に十分な準備をかけることと遺言書の作成時には細心の注意が必要です。

今回の記事をきっかけに遺言書について興味を持った方は、ご自身が遺言について勉強することはもちろん、必要に応じて弁護士や司法書士などの専門家にご相談されるとよいでしょう。

また、相続に関して遺言書は万能ではありません。例えばお子さんに対する相続を決めておくことは出来ますが、お子さんの死後、お孫さんに対してどのように相続させたいか遺言書であなたの意思を示していても、お子さんがその通りの相続を実行するかはお子さんの意思次第になってしまいます。

そのような場合、あなたが亡くなった後、長くその意思を反映させる方法として『家族信託』という手法があります。

家族信託は、あなたが亡くなった後の相続だけでなく、生前からの問題(認知症対策など)を解決する有効な手段として最近注目されています。相続に限らず老後の資産に関する不安をお持ちの方は遺言書とあわせて次のリンクをご確認することをおすすめします。

家族信託とは|親にも説明できる家族信託のしくみとメリット

【参考文献】
「遺言の書き方と相続・贈与」比留田薫(主婦の友社)

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