後見制度利用前に必読!弁護士後見人のメリットとデメリット

後見人 弁護士

高齢になったご家族や、ご自分の後見人を誰に依頼すべきか考えたとき、法律のエキスパートである弁護士に依頼するという選択肢があります。また、利用する制度によっては、意図するとしないとにかかわらず弁護士が後見人になるケースもあります。 

しかし、実際に弁護士を後見人にすることはオススメしていません。

なぜなら、弁護士が後見人になることで、大変な不利益を被り、ご家族ともども多大なストレスを後見人に感じ続けなければならない状況に陥る場合が多々あるからです。

ただし、多くの財産を所有している方やそのご家族などは、法律に精通した弁護士を後見人にすれば、あらゆる法律問題に対処してもらえるというメリットがあることも事実です。 

そこで、本記事では後見人を弁護士にする場合のメリットとデメリットをわかりやすく見て行くとともに、弁護士が後見人になることで生じているトラブルや、それらを回避する方法を、後見制度の実情をご紹介します。弁護士が後見人なることでどういう影響がでるのか把握することで弁護士に後見人を頼むかどうかを決めていきましょう。

1. 弁護士が後見人になるメリット

弁護士が後見人になることで得られるメリットは、次のとおりです。

1-1. あらゆる法律問題にすみやかに対応できる

弁護士といえば、法律に関する知識量が他の専門家に比べて突出して豊富であり、紛争の解決などに力を発揮する存在です。

ですから、あらゆる法律問題のトラブルが発生したときにはすみやかに解決してもらえる可能性が高いでしょう。

例えば、第三者からの不正な財産侵害を受けた場合に成年被後見人を原告として裁判を起こすなどの法律的な措置を速やかに取ることができます。

このようにトラブルが発生した際に、法律的な対策を速やかに行うことができます。

1-2. 管理財産が高額等の場合に力を発揮する

また、管理財産が高額(5,000万円以上)に上る場合や、財産の数が多い、複雑な管理が必要である場合などにも力を発揮し、適切な処理が望めます。 

たとえば、被後見人が所有するマンション等の住人が家賃を滞納したような場合や住人間トラブルに巻き込まれたような場合にも、適切な対処が望めます。

所有する物件が多ければ多いほどそのようなトラブルに巻き込まれる可能性は高く、管理が複雑であればあるほど法律関係も複雑になりますが、信頼できる弁護士が後見人である場合には、適切な対処が期待できます。

1-3. 遺産分割協議に参加できる

親族が後見人である場合、被後見人と後見人とが同じ相続の相続人になると、その親族後見人はその相続において、利益相反行為(後見人と被後見人の利益が相反する行為)になってしまうため被後見人を代理して遺産分割協議に参加できません。例えば、お母さんが後見人であり、被後見人であるお父さんが亡くなった場合です。

この場合には、家庭裁判所に特別な代理人を立ててもらう手続きが必要ですが、弁護士が後見人である場合にはそのような手間がかかりません。

ただし、これは後見人が弁護士でなければいけないわけでなく、司法書士など他の専門職後見人にも可能です。

2. 弁護士が後見人になるデメリット

では次にデメリットについて見てみましょう。

2-1. 後見を「ビジネス」と捉えている弁護士が多い

後見制度は、国の社会福祉制度のひとつです。

任意後見制度の場合は、双方がよく相談することで後見の内容を決め、それに見合った報酬を支払うことになるため、とくに問題はありません。

が、かたや、法定後見制度により家庭裁判所が後見人に弁護士を選んだ際には、後見人を必要としている方にとっては、制度上その弁護士の後見人を拒否することも、申立て取り消すこともできないという立場に置かれ、そこには双方の相談もなければ合意もないという一方的な関係が生まれます。

ですから、後見人を必要として法定後見制度を利用した方は、家庭裁判所が選任した弁護士後見人には注意が必要です。

弁護士は社会貢献で後見人を引き受けない

弁護士は社会貢献(ボランティア)で後見人を引き受けるのではなく、被後見人の財産から一定の報酬を受け取ることができる制度を利用して、「ビジネス」として後見人を引き受けることがほとんどという現状があります。

仮に、「社会貢献」の意識がまったくなく、後見を単に「ビジネス」とだけ捉えた場合には、仕事をしてもしなくても同じ報酬額となり、仕事量が少なければ少ないほど単価が高くなるので、仕事をしない方が有利ということになってしまうのです。とくに、その他の業務の報酬も高額な傾向にある弁護士ですから、仕事単価の感覚も非常に高額であるものと推察されます。 

弁護士にとって後見人だけでビジネスは成り立たない

後見人としての報酬金額は、弁護士にとっては後見人だけでビジネスが成り立つほど高額なものではないため、基本的にどの弁護士後見人も、他の業務をこなしながら後見も請け負っている状況です。そのため、その報酬額を超える範囲で、親身になって被後見人やその親族の意見に耳を傾けてくれる弁護士は非常に少ないというのが実状なのです。

ちなみに、管理財産の額が500万円以下のケースについては、家庭裁判所から依頼があっても弁護士の側で断るようなケースさえあります。理由は、単純に、管理財産額が少なければ報酬が少ないからです。

ですから、法定後見制度では、上述のメリットが十分に享受されないケースが多く、それがもとでトラブルに発展することもしばしばです。

このデメリットが、これから後見制度を利用しようとしている方が、もっとも注意すべき事項といえるでしょう。

2-2. 報酬が高額である

このデメリットは、弁護士を任意後見人とした場合のデメリットになります。 (法定後見人の報酬の目安は、3-1でご覧ください。

やはり、法律のエキスパートである弁護士に後見人になってもらうには高額の費用が発生します。 

相場としては、基本報酬は月額5万円程度ですが、加えて、管理する財産額、種類、数、管理の複雑さなどに応じて加算されます。例えば、不動産を売却するなどがあれば1回あたり5万円〜10万円の追加報酬が弁護士に発生することがあります。

総額がどれくらいになるかは、それぞれの弁護士によって違いますので、ご相談ということになります。

2-3. 弁護士後見人のトラブル事例

下記のように、多くの弁護士後見人が実際にトラブルを起こしています。

何かがおかしいとは、薄々感じていたけど、本当に驚きました。私が見に行くと、山梨にある大伯母の持ち家はボロボロで雑草も伸び放題。玄関を開けると長年閉め切っていたような、カビ臭い空気が噴き出してきました。ネズミか何か小動物でも棲み付いたのか、アンモニア臭が漂う部屋もありました。

ところが、大伯母の成年後見人である弁護士は、この空き家の施設管理や風通しに行くと称して、同僚弁護士とレンタカーを借り、その経費を大伯母の口座から何度も引き出しているんです。その総額は、100万円や200万円ではきかないと思います

出典:週刊現代

弁護士の男(65)は、交通事故や医療過誤の損害賠償訴訟で支払われた賠償金の他、成年後見人として預かっていた財産など、計22件で総額約9億円を着服していた。地裁は男に対し、懲役14年の判決を言い渡した。

出典:リジョブ介護

都内の元弁護士は、後見人として管理していた高齢女性の預金口座から約1300万円を引き出して着服したとして業務上横領罪で起訴された。

出典:日本経済新聞

このほか、弁護士による後見人という立場を利用したトラブルは枚挙にいとまがありません。

3. 弁護士を後見人にする前に知っておきたい後見制度の現状

弁護士後見人には以上のようなメリットとデメリットがありますが、次に、弁護士を後見人にする前に知っておきたい後見制度の現状をご紹介しましょう。

3-1. 法定後見制度は「ビジネス」なのか「社会貢献」なのかが曖昧である

上述のとおり、成年後見制度というのは、国の社会福祉政策の一環として作られた制度です。

法定後見制度では家庭裁判所に後見人を選任する権限があり、また、後見人の報酬についても家庭裁判所が決めることになります。

法定後見人の基本報酬は、おおよそ以下の金額の範囲から家庭裁判所が決定します。

■法定後見人の基本報酬

管理財産額 後見人の基本報酬
管理財産額が1000万円以下 月額2万円(年額24万円)
管理財産額が1000万〜5000万円 月額3〜4万円(年額36〜48万円)
管理財産額が5000万円以上 月額5〜6万円(年額60〜72万円)

このように、法定後見制度では、報酬の金額は被後見人の持っている財産額(後見人の管理する財産額)で決まるわけです。

 ですから、被後見人と後見人の間には、これだけ仕事をしてくれたらこれだけの報酬を払いますよ、という明確な仕事量と報酬の対応関係がありません。

 また、後見人は自ら報酬の支払いを求めず、完全なボランティアに徹することもできます。(通常、親族の後見人は報酬の支払いを家庭裁判所に申立てないことで報酬を受け取らないケースがほとんどです)

つまり、法定後見制度は後見人にとって、「ビジネス」なのか「ボランティア(無償の社会貢献)」なのかがどっちつかずの状態にある、もしくはどっちの要素もあるということなのです。

ですから、法定後見制度において、弁護士が後見人になるメリットを享受できるかどうかは、ひとえに、その弁護士が後見を「ビジネス」と「社会貢献」のどちらに比重を置いているかにかかっており、そのどちらかで職務遂行態度が大きく異なってくるということになります。

3-2. 法定後見制度は非常に自由が利かない制度である

それから、また法定後見制度についての話になりますが、制度の利用者側で後見人を選べないなど、制度利用者(その多くは親族)の側にとって非常に不自由で、意思の反映されにくい制度となっています。

たとえば、後見人が報酬に見合った仕事をしないなどの理由から、被後見人の親族が不満を持ったとしても、後見人が違法行為や著しい反社会的な言動をしたような場合でないかぎり、後見人を解任したり減俸したり、後見そのものをやめたりできないのです。

家庭裁判所は、基本的に被後見人の親族に対しては、非常に厳しい傾向にあって、自らが選任した後見人の判断を重視する傾向にもあります。

これは、後見制度開始以来、親族の後見人が被後見人の財産を横領するなどの事件が頻発した結果でもあり、家庭裁判所は被後見人の親族を疑惑の目で見ているといっても過言ではない状況にあるのです。 

このことも前提として知っておくべき知識のひとつでしょう。

4. トラブルを未然に防ぐにはどうすればいい?

では最後に、以上見てきたような弁護士後見人に関するトラブルを未然に防ぐ方法をご紹介します。

4-1. 法定後見制度の利用は極力避ける

以上のように、法定後見制度には非常に多くの問題点があります。

ですので、極力この制度の利用は避け、任意後見制度を含め別の方法がないかどうかをよく検討された方がよいでしょう。

ご家族が認知症などによって完全に判断能力が失われてしまっていて、急を要する場合などでなければ法定後見制度は利用しない方が無難です。

4-2. 家族信託を利用する

後見制度以外の、高齢になったご家族の財産管理の手法として、「家族信託」という制度があります(認知症になる前に使うことができる制度です)。

この制度は、2006年の信託法改正を受け、後見制度の不備を補うかたちで新しく生まれたもので、ご家族の財産を信託というかたちで親族に託し、管理を行える制度です。

上述のような深刻なトラブルを回避し、ご家族の財産を見知らぬ弁護士などの手に渡すことなく管理できる画期的な手法として注目を集めています。

また、わりと自由度の高い任意後見制度との相性もよく、併用することでさらに自由にご家族へのサポートが実現します。

信頼できる弁護士に任意後見人になってもらうような場合でも、併用が可能です。

5. まとめ

以上のように、弁護士が後見人になるメリットとデメリットは、後見制度の現状を前提として知らなければ理解できないものであることがわかっていただけたかと思います。

弁護士を後見人にすることで得られるメリットを最大限に引き出すためにも、それらの現状認識が重要になってきます。

これから後見制度を利用しようとお考えの方は、ぜひ上記を参考のうえ、慎重に制度利用をご検討下さい。

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