後見監督人って何?ひと目でわかる後見制度の監督人のすべて

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成年後見制度について調べている人なら、「後見監督人」という言葉を目にしていろいろな疑問を持つことも多いでしょう。

そもそも「後見人」自体がある意味でいえば、特定の人を監督し、サポートする立場なのに、さらに「監督人」ってどういうこと?など、いろいろと疑問が湧いてきますよね。

端的に言うと、後見監督人とは、後見人の活動を監督する人のことです。

ご自分が後見人である場合などに、ある日とつぜん自分に監督人をつけられて、監督人とどのように付き合っていいかわからず、もめごとに発展するケースも見られます。

そのような時に備えるためにも、前もって後見監督人の種類や役割、手続きなどを知っておくべきでしょう。

この記事では、そのような観点から必要な知識をわかりやすく表にまとめ、解説していきます。

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1 後見監督人とは?なぜ必要なのか?

そもそも後見監督人とはどのような人のことをいうのかというと、その名のとおり、後見人を監督する立場にある人のことをいいます。

後見人は、家庭裁判所が選任したり、被後見人自身が直接契約したりと、一定の信用がある人が選ばれてはいますが、それでもやはり不適切な行為の行われる余地がまったくないとは言いきれません。

例えば、後見人には被後見人の財産を管理する権限が与えられますが、後見人がその財産を自分の利益のために運用するなど、不正を働く余地がないとはいえないのです。

とくに、被後見人本人が判断能力の衰えた人であるため、本人がそれを自ら阻止できないことから、誰かがそれを監督する必要があるわけです。

そこで、後見人のさまざまな後見行為を、さらに背後から監督する立場を設けて、正しく後見行為が行われるかどうかを監督しようというのが、後見監督人という制度の趣旨なのです。

また、もともと、後見人の監督という役目は家庭裁判所が直接行っていましたが、高齢化社会が進んだことによって後見制度の利用者が増え、家庭裁判所だけでは手がまわらなくなりました。

そのため、後見監督人の制度を設けて外部に後見人の監督を代行させるようになったという経緯があります。

そういった経緯があることから、後見監督人には、弁護士や司法書士、社会福祉士などの国家資格を持った専門家がつくことが多くなっています。

また、監督人には法人が選任されることもあり、場合によっては複数の人や法人が監督人になることもあります。


2 後見監督人の種類は?

成年後見制度には大きくわけて「任意後見制度」と「法定後見制度」2種類の制度があり、後見監督人はその手続きや役割が若干異なります。

ではまず、この2つの制度における後見人の相違点と共通点をわかりやすく表でまとめ、それから詳しく解説しましょう。

後見制度の種類の表


3 任意後見制度では後見監督人が必ずつく

任意後見制度を利用する場合、必ず「任意後見監督人」が選任されます。

任意後見制度は、被後見人になる人が認知症などにかかる前に、あらかじめ後見人になる人と後見契約を結んでおき、その後、被後見人が認知症などで判断力が低下することをきっかけに後見が開始されます。

この「後見の開始」は、その判断力が低下した人の家族が家庭裁判所に申立てを行い、任意後見監督人を選任してもらうことで開始されることになっています。

つまり、任意後見は、後見人に対して後見監督人がつけられた時点から開始されるわけです。

ですから、任意後見制度では、後見人には必ず任意後見監督人がつくことになるわけです。

3−1 任意後見監督人の職務

任意後見監督人の主な職務は、任意後見人の監督です。

そもそも、任意後見人の職務は、被後見人との間で交わした「任意後見契約」にのっとって行われるべきものです。

ですので、任意後見監督人は、その契約内容を良く理解したうえで、任意後見人の後見行為がその契約のとおりに正しく行われているかどうかを監督することになります。

具体的には、任意後見人が行った行為の報告を求めたり、財産の調査や財産目録の作成などに立ち会ったり、また、特殊な事情がある場合にはその場で対処したりといった事務を行います。

そのほか、本人と任意後見人の利益が相反する行為(利益相反行為)を行う際には、任意後見監督人は本人を代表することになります。

3−2 任意後見監督人をつけるための手続き

上述の通り、任意後見監督人は、被後見人の家族等の申立てにもとづき家庭裁判所から選任を受けます。

この申立ては「任意後見監督人選任の申立て」といい、申立てを行うことができる人等は次の通り定められています。

① 申立てを行うことができる人
・被後見人になる人(本人)
・本人の配偶者
・本人の4親等内の親族
・任意後見人となる人

※4親等内の親族とは下記の図に記載されている人をいいます。

四親等内の親族

② 申立てに必要な書類
・任意後見監督人選任の申立書
・申立書付票
・医師による診断書
・本人の戸籍謄本、住民票
・後見登記事項証明書
・ その他、各家庭裁判所が指定する書類(家庭裁判所ごとに異なります)

③ 申立て費用
任意後見監督人選任の申立てにかかる費用は、収入印紙800円、登記費用1400円のほか、郵便切手代が3000〜5000円(裁判所によって金額が異なります)がかかります。

また、本人に精神鑑定が必要な場合は精神鑑定料として別途5万円ほどの費用が必要となります。

 


4 法定後見制度では後見監督人がつかないこともある

4−1 後見監督人等がつく場合

法定後見制度では、任意後見制度と違い、必ず監督人がつけられるというものではなく、家庭裁判所が必要と認めた場合に限り後見人等に監督人がつくことになります。

家庭裁判所が、監督人が必要と認める場合には次のような場合があります。

・ 後見人が管理する財産や収入の金額が大きい場合
・ 親族間にもめごとがある場合
・ 後見人が高齢である、若い、体調に不安があるなど、後見人が頼りない場合
・ 後見人と被後見人の利害が一致しない(利益相反)状況にある場合
・ 財産状況が不確かな場合

以上のほか、被後見人の利益を守るために、家庭裁判所が後見人を監督する必要があると認める事由があるときには、監督人が選任されます。

とくに、後見人等が専門家ではない被後見人等の親族である場合には、家庭裁判所が職権で監督人をつけるケースが増えています。

4−2  後見監督人等の職務

法定後見制度の後見人には、成年後見人、保佐人、補助人の3種類があります。

これらは被後見人の判断能力の乏しさの度合いによって分類されていますが、成年後見監督人、保佐監督人、補助監督人は、それぞれ後見人、保佐人、補助人が持つ権限の範囲で適正に事務が行われているかどうかを監督します。

具体的には、後見人等が行った行為の報告を求めたり、財産の調査や財産目録の作成などに立ち会ったり、また、特殊な事情がある場合にはその場で対処したりといった事務を行うことになります。

そのほか、被後見人等本人と後見人等の利益が相反する行為(利益相反行為)を行う際には、後見監督人等は本人を代表することになります。

4−3  後見監督人等をつけるための手続き

法定後見制度における監督人の選任は、被後見人の家族などが申立てをして家庭裁判所に選任してもらう場合と、それらの申立てを経ずに家庭裁判所が独断で選任する場合の2パターンがあります。

どちらの場合でも、特定の人を指名して監督人に選任してもらうことはできず、家庭裁判所が職権で人選を行います。

家庭裁判所が独断で選任する場合については何の手続きも必要ありませんが、家庭裁判所に申立てをする際には次のような定めがあります。

① 後見監督人等の選任を申立てできる人
・ 被後見人
・ 被後見人の親族
・ 後見人等

② 申立てに必要な書類
・家事審判申立書

 


5 任意後見制度と法定後見制度における後見監督人の共通点

5−1 後見監督人になれない人

後見監督人になれない人として、民法上で以下のように定められています。

・後見人の配偶者・直系血族(子・父母・祖父母・孫など)・兄弟姉妹
・未成年者
・過去に家庭裁判所から後見人を解任されたことがある人
・破産者
・過去に被後見人を相手に訴訟を起こしたことがある人
・行方不明者

5−2 家庭裁判所への報告義務

後見監督人には、行った監督行為について、家庭裁判所への報告義務があります。

後見監督人は、後見が行われている期間中、後見人が行った後見行為を証明する書類、例えば、生活費や医療費、租税公課の領収証などの
提出を求めることができます。

そして、それら後見人から提出を受けた書類は、家庭裁判所に提出し、報告しなければなりません。

また、後見人から財産目録や年間収支予定表などの提出を受けた際にも、家庭裁判所への報告義務があります。

つまり、後見監督人は、後見人を監督する立場であると同時に、家庭裁判所の監督を受ける立場でもあるというわけです。

5−3 後見人の解任

後見監督人は、後見人が不正を行ったときは、家庭裁判所に後見人の解任を請求することができます。

例えば、後見人が被後見人の預金を使い込んだり、生活費などの費用を水増ししたり、勝手に被後見人の金銭を誰かに貸したりした場合です。

この場合、請求を受けた家庭裁判所が後見人を解任します。

5−4 後見監督人の報酬

後見監督人は、被後見人の財産の中から報酬を受け取ることができます。

後見監督人には、報酬付与の申立てを行う権利はありますが、金額を指定して請求する権利はありません。あくまでも、家庭裁判所が裁量で決定します。

5−5 後見監督人の辞任

後見監督人は、病気や老齢などの正当な理由がある場合に限り、辞任することができます。

この場合、家庭裁判所に対して辞任許可の申立てを行って許可を得る必要があります。

なお、「後見人が不正を行う可能性がない」という理由で辞任することもありえます。


6 まとめ

以上のように、後見監督人とは、後見人と家庭裁判所の間に入り、後見人を監督して家庭裁判所に報告する立場の、わりと専門的な知識を要する役職です。

これらの手続きや、職務などについては、後見制度を利用する際にはひととおり頭に入れておきたい知識のひとつといえます。

以上の知識が、後見制度を利用する際の一助になれば幸いです。

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