遺言書の効力が無効になる6つのケースと効力に関してよくある3つの質問

遺言書 効力

残された遺言書の内容が有効なのか無効なのか、無効とならない遺言書の書くためにはどのような点に注意すれば良いのか、遺言書の効力について、悩んでいらっしゃる方も多いのではないのでしょうか? 

実際、遺言書には法的に効力を持つ項目と持たない項目があります。

法的に効力のある項目は、大きく分けて次の3つ関する項目になります。

  1. 身分に関する項目・・・子の認知や未成年者の後見人、後見監督人の指定
  2. 財産の処分に関する項目・・・財産の遺贈(相続人以外に財産を贈与すること)、財産の寄付、信託の設定
  3. 相続に関する項目・・・相続分の指定、遺産分割方法の指定、特別受益の持ち戻しの免除(相続分から差し引かれる生前贈与や遺贈などによる特別受益を考慮することを免除すること)、相続人の廃除、祭祀継承者の指定など

※身分に関する項目として、婚姻や養子縁組に関する内容は認められていないことに注意が必要です。

遺言書に書くことができる項目

(出典:「遺言の書き方と相続・贈与」比留田薫(主婦の友社)より一部抜粋)

しかし、法的に効力を持っている項目を書いたとしても、形式の不備によって遺言書自体が無効となってしまうケースもあります。 

そこで、この記事では遺言書の効力について、遺言書が無効となってしまう6つのケースとよくある3つの質問をまとめてありますので、確認していきましょう。

1. 遺言書の効力が無効になる6つのケース

1-1. 書き方に誤りや形式に不備のある遺言書

遺言書の種類にはいくつかありますが、今回は、遺言書の内容について有効か無効かを問われることが多い、自筆証書遺言と秘密証書遺言についてご説明します。

1-1-1. 自筆証書遺言

自筆証書遺言は、証人も不要で、遺言書を自筆で作成できる遺言書です。

しかし、その書き方には厳密な決まりがあり、次の4点を満たしていないと無効になってしまいますので、注意が必要です。

ワープロや代筆で作成された遺言書

自筆証書遺言は必ず全文を自筆で書かなければなりません。(民法9681項)

ワープロや代筆で作成された遺言書は無効となります。

テープへの録音やビデオに録画した遺言

テープに録音した遺言やビデオに録画した遺言も無効です。

日付、氏名、押印のいずれか一つが欠けている遺言書

遺言書には日付、氏名を自筆で書き、押印します。日付、氏名、押印のいずれか一つが欠けても無効となります。(民法9681項)

日付は西暦、元号、いずれも構いませんが、『平成○年○月』や『平成○年○月吉日』のように具体的な日付を特定できない書き方では無効になってしまいますので注意が必要です。

また、押印に使用する印鑑は、実印に限らず認め印、拇印でも良いとされていますが、本人が作成したことをより明確にしてトラブルを避けるため、実印を使用したほうが良いでしょう。

訂正、加筆、削除を正しく行っていない自筆証書遺言書

遺言書の内容を訂正、加筆、削除する場合には、法律に定められた方法によるものでなければ、無効となってしまいます。(民法9682項) 

一字を訂正する場合でも法律に定められた方法によらなければ無効となってしいますので、以下の訂正方法を守りましょう。遺言書の修正

1-1-2. 秘密証書遺言

秘密証書遺言は、遺言の内容を秘密にしながら、公証人にその存在を証明してもらう遺言書です。

秘密証書遺言では、次の2点を満たしていないと無効になってしまいます。

自筆の署名、日付、押印が欠けている遺言書

自筆証書遺言とは異なり、本文は本人の自筆でなく、ワープロや代筆でもよいですが、署名だけは自筆でなければなりません。日付や押印も必要になります。(民法970条1項)

訂正、加筆、削除を正しく行っていない遺言書

加除訂正については、自筆証書遺言と同様に法律に定められた方式によらなければ、無効となってしまいます。(民法9702項)

1-2. 遺留分を無視した遺言書

民法では、遺族の法定相続人としての権利や利益を守るために、遺族が相続できる最低限度の相続分を遺留分という形で規定しています。(民法1028条)

また、遺留分を侵害する内容の遺言書の場合、侵害された相続人は贈与または遺贈を受けた相手に対して財産の返還を求める権利(遺留分減殺請求権)が認められています。(民法1031条)

つまり、遺留分を無視した遺言書は、それ自体無効となりませんが、相続人には遺留分という最低限度の相続分があるということになります。

例えば、相続人の二人の子供に対して、『全ての財産を長男に相続させる』と遺言していた場合、遺言書の通り長男が全ての遺産を相続し、次男は一切の財産を相続しないということで納得すれば問題はありません。

しかし、全く財産を相続できない次男が不公平に思うのも当然です。その場合、次男は侵害された遺留分について、長男に遺留分の減殺請求を行う可能性が高いです。 

一度、遺留分について問題になると、必ずと言っていいほど親族間のトラブルが発生します。

ですので、トラブルを避けるためにも遺言書の内容は遺留分に十分配慮したものにしなければなりません。

【遺留分について】
次の図のように、遺留分が認められているのは、被相続人の配偶者、直系卑属(子、孫、ひ孫など)、直系尊属(父母、祖父母、曽祖父母)についてだけで、被相続人の兄弟姉妹には認められていません。

また、減殺請求の対象には生前贈与も該当することに注意が必要です。

遺留分

(出典:「遺言の書き方と相続・贈与」比留田薫(主婦の友社)より一部抜粋・改変)

1-3. 遺言書が複数あるケースで最新日付でない遺言書

民法では、「前の遺言と後の遺言が抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。」と規定されています。(民法1023条)

つまり、遺言書が複数ある場合、前後に書かれた同一の内容(抵触する部分)については、最も新しい日付のものが有効になるということになり、それ以前に書かれた遺言書の該当する内容は撤回されたものとされ、無効となります。 

また、勘違いしやすい点として、前に書かれた遺言書の内容がすべて無効になるわけではないことがあげられます。

ですので、遺言者の死後、遺族が複数の遺言書を見つけた場合には、全ての遺言書を保管すること、遺言者が遺言書の内容を修正する場合には、それが一部であってもすべてを書き直し、不要になった遺言書は確実に廃棄することが、混乱を避けるポイントになります。

さらに、「前三条の規定により撤回された遺言は、その撤回の行為が、撤回され、取り消され、又は効力を生じなくなるに至ったときであっても、その効力を回復しない。」とも規定されています。(民法1025条)

つまり、一度作成し直した遺言書によって撤回された内容を、元の内容に修正するためには、再度、遺言書を作成する必要があるのです。

1-4. 詐欺や脅迫、判断能力がない状態で書かれた遺言書

遺言書の内容について関係する者や第三者による詐欺や脅迫によって書かれた遺言書は、当然ですが無効となります。

また、遺言書を作成した時点で、遺言者が『遺言能力』(遺言書の内容をきちんと理解し、その結果がどうなるかを理解する能力)がある状態で書かれたものでないと無効となってしまいます。(民法963条)

遺言者の遺言能力、とりわけ認知症を発症した方の遺言能力の有無を問われる場合、裁判所において次の二点が主な判断材料になります。

一つは、医師の診断書、介護保険の認定に使用された医師の意見書、病院に入院していた時の医師のカルテと看護記録、介護サービスを受けている際の介護記録などが医学的見地から作成された書類として証拠となります。

もう一つ、遺言書の内容が簡単なものか、複雑なものか、また、遺言者と相続人との関係から自然であるかも判断の材料となります。 

例えば、合理的な理由がないにもかかわらず、特定の相続人や第三者にすべての財産を譲るという遺言はあきらかに不自然であることから、その有効性が問題になります。

ですので、遺言書の作成時点での遺言能力の有無を問われないためには、主治医や弁護士に相談の上、遺言書作成時点での遺言書を作成する能力があったことを示す客観的な資料(医師の診断書やビデオなど)を残しておくことが重要です。

また、遺言書を作成する場合には、第三者が確認しない自筆証書遺言に比べて、証人の前で公証人により遺言者の状態と意思を確認しながら作成される公正証書遺言の方が信頼性は高まります。

 しかし、たとえ客観的な資料があり、公正証書遺言で作成されている場合でも、遺言能力の有無が争われた結果、無効になるケースもありますので、遺言書を残そうと考えている方は、元気なときからできるだけ早めに遺言書を作成することをおすすめします。

1-5. 15歳未満のものが書いた遺言書

民法では、「十五歳に達した者は、遺言をすることができる。」と規定されています。(民法961条) 

契約などの法律行為を単独で行う際に必要である行為能力は、未成年にはありませんが、15歳以上であれば遺言書を作成することができます。ただし、前提として遺言者に『遺言能力』があることが必要です。

1-6. 財産分与に関して相続人の全員の同意がある遺言書

遺言とは遺言者の財産をどのように相続させたいのか最終的な意思を相続人に伝える手段です。

しかし、相続人全員(遺贈があれば受遺者も含む)の同意があれば、遺言書で示された内容とは異なる遺産分割を行うことができます。

ただし、次の点に注意が必要です。 

・遺言者が遺言で遺言と異なった遺産分割を禁止している場合には、遺言書で示された内容とは異なる遺産分割を行うことができない。(民法908条)
・遺言執行者が選任されている場合には、原則として遺言と異なった遺産分割はできない。
・しかし、遺言執行者が選任されている場合でも、遺産分割について相続人全員の同意があり、かつ遺言執行者が同意した場合には、遺言書で示された内容とは異なる遺産分割を行うことができる。

2. 遺言書の効力に関してよくある質問

2-1. 勝手に開封しても遺言書は有効なの?

遺言者の死後見つけた封印された遺言書をそのまま開封してしまった場合でも、その遺言書は有効です。また、開封してしまった人が相続人の資格を失うこともありません。

民法では「封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができない。」(民法10043項)と規定されており、家庭裁判所での検認を怠ると5万円以下の過料に処せられると規定されています。(民法1005条)

もし、開封した遺言書が無効になってしまうのなら、5万円以下の過料を承知の上で、遺言書を無効にするために故意に開封する人がいるかもしれません。しかし、開封してしまった場合でも遺言書自体は無効とはなりません。

ただし、「遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。」(民法10041項)と規定されています。

遺言者の死後、遺言書を見つけたときには、相続人や関係者に連絡して、速やかに家庭裁判所に提出し、検認の手続きを行いましょう。 

※裁判所の検認とは
公正証書遺言を除く遺言書(自筆証書遺言・秘密証書遺言)は、遺言者の死後、遺言書を家庭裁判所に提出して「検認」を受けなければなりません。また、封印のある遺言書は、家庭裁判所で相続人の立会いのもと開封しなければならないことになっています。検認は、相続人に対し遺言の存在およびその内容を知らせるとともに、遺言書の形状、加除訂正、日付、署名、押印など、遺言書の内容を明確にして遺言書の偽造や変造を防止し、遺言書をそのままの状態で保存するための手続です。

2-2. 遺言書には有効期限はない?

遺言書には有効期限はありません。たとえ10年以上前に書かれたものであっても有効になります。

しかし、遺言書を書いてから時間が経過すれば、財産の状況や相続人にも変化がある可能性が高くなります。できれば、定期的に内容を見直し、内容を最新のものに改めておくことも重要です。

その際、遺言書が複数ある場合には、最新の日付のものが有効になり、前の遺言書は、後の遺言書に書かれた同一の内容(抵触する部分)については、無効となります。

ですので、遺言書を見直す際には、全体を書き直して古い遺言書を破棄し、不要な混乱を避けるようにしましょう。

2-3. 相続が済んだ後に遺言書が出てきた場合、どうすればいいの?

遺言書の存在や内容を知らずに、遺産分割協議が行われた場合、遺言書の内容が優先され、遺産分割協議は原則無効となります。

しかし、最高裁は、「遺言の存在を知らないで行った遺産分割協議は、要素の錯誤により常に無効になるとはいえない」(平成5.12.13)との判決を下しています。

つまり、遺産分割協議後に遺言が見つかっても、必ずしも遺産分割協議そのものが無効になるとは限らず、遺言の内容を知っていれば、分割協議には応じなかったといえるような理由がある場合に遺産分割協議の無効を認めるということになります。 

そのため、相続人全員が、遺言書の内容を承知したうえで、遺産分割協議の内容を優先するとの相続人全員の合意があれば、遺産分割協議は有効になります。

ただし、もし遺言書に相続人以外への遺贈や、子の認知、相続人廃除に関する内容が書かれていた場合には、相続分や相続人が変わってきますので、遺産分割協議は無効となります。

3. まとめ

遺言書の効力とその注意点についてご理解いただけたと思います。注意点に気をつけて、遺言書の有効性を確認したり、無効になることがない遺言書を作成してください。

もし、すでに遺言書の内容についてトラブルになっている場合、またはトラブルになる可能性のある場合には、少しでも早く弁護士へご相談することをおすすめします。

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