トラブル防止|家族信託の契約書を公正証書で作成するべき理由

公正証書とは、法律の専門家である公証人がよって作成された公文書のことです。

家族信託契約は公正証書で契約書を作成しなくても、信託契約自体の効力は発揮します。

しかし、信託契約において訴訟や契約書の改善など後のトラブルを防止するためには公正証書で契約書を作成することが欠かせません。

実際、これまで80件を超える家族信託の契約をサポートしてきましたが、実にその95%以上が公正証書による家族信託契約です。

そこで、この記事では家族信託の契約書を公正証書で作成する理由、さらに手続きの内容、費用についてお伝えしていきます。

1. 家族信託を公正証書で作成する3つの理由

家族信託の契約自体は公正証書によって契約書を作成しなくても、効力は発揮します。
しかし、次の3つのトラブルを防止するために、実務上、公正証書で作成することが欠かせません。

1-1 契約の有効性を巡るトラブル|信託契約の効力をめぐって兄弟からの訴訟

公正証書には、強い証明力があり、契約締結後に契約の有無を巡って訴訟になりづらいという特徴があります。

信託契約の多くが、ご両親が認知症になったときに、ご両親が所有する財産を活用して生活をサポートすることを目的にしています。財産の管理を行う子供には、預金の活用はもちろん、場合によっては実家を売却することもできる強い権限があります。

もし、契約内容に対する理解が不十分であったり、不満のあるご兄弟がいると、信託契約の有効性をめぐって、後のトラブルになりかねません。

特に、家族信託で注意したいトラブルが契約時の意思能力です。不満のある兄弟などから、契約時にはすでに両親の意思能力がなかったとして、裁判を起こされる可能性があります。意思能力がなかったとしら、そもそも契約行為ができないので、信託契約も無効となってしまいます。

その点、公正証書は、法律に精通した公証人が、法令に違反する箇所がないかを確認して作成します。さらに、契約当事者の身元についても、印鑑証明書などで確認します。

本人確認に加えて、契約当事者である親子の前で契約内容を読み上げて、内容に相違がないか確かめることになるので、契約時点の意思能力を第三者視点で担保することができるのです。

こうすることで、契約当時の意思能力の有無に関するトラブルを未然に防ぐことが可能です。

1-2 改ざんの防止

公正証書ではない契約書の場合、第3者の手によって改ざん、偽造されてしまう恐れがあります。

たとえば、信託契約の内容に不満がある兄弟の手によって、信託財産の内容や財産管理人を書き換えられるといったことも考えられます。

この点、公正証書による契約書は原本が公証役場で保管され、同じ契約内容が記載された書面である謄本が契約当事者に交付されることになります。そのため、たとえ契約書が改ざん、偽造される恐れもありません。

なお、万が一契約書の謄本を紛失してしまった場合にも、公証役場に申し出れば、再発行してもらうことも可能です。

1-3 信託口口座の開設のため

家族信託では管理の委託を受けた財産と管理人である子どもの財産と分けて管理する義務があります。

管理を委託された財産が現金の場合、分別管理を行うために銀行で信託専用口座である「信託口口座」を開設することが一般的です。

この信託口口座を開設するにあたって、家族信託の契約書は公正証書である旨が定められている銀行がほとんどです。そのため、信託口口座を開設するために、公正証書による家族信託契約が必要になります。

2. 一人っ子なら、公正証書ではなくても問題なし

ご両親の財産管理を任されるお子さまが「一人っ子」の場合は、家族信託の契約書は公正証書でなくても、大きな問題にはなりません。

家族信託におけるトラブルの多くが兄弟間によるものです。
そのため、そもそも兄弟がいない一人っ子の場合は、管理委託をされた財産をめぐってトラブルになる可能性が低く、必ずしも公正証書でなくてはいけないわけではないのです。

ご兄弟がいる場合は、たとえ現在の仲が良かったとしても、経済環境の変化等によってご兄弟の状況も変わってくることもあるので、必ず公正証書にしておくことをおすすめします。

また、「公正証書による家族信託契約」であることが信託口口座の開設条件とされていますが、財産の分別管理にあたっては、必ず信託口口座でなければいけないわけでありません。専用の一般口座を開設して、当該口座を信託預金専用として活用することもできます。

なお、このケースでは、万が一財産の管理人が破産してしまった場合には、信託口口座とは異なり、保全措置はありませんので注意が必要です。

3. 家族信託の契約書を公正証書で作成するための手順

3-1 契約書案を作成する

公証役場はいちから契約内容を定めて、あなたのご家族にあった家族信託の契約書を作成してくれるわけではありません。あくまでも、契約書の内容に法律上の誤りがないかを確認し、証明してくれるだけです。

そのため、公証役場に訪れる前に、司法書士等の専門家に相談して契約書に記載する内容を定めておく必要があります。信頼できる専門家選びはこちらの記事を参考にしてください。家族信託の相談先はココ!専門家の見極め方とよくある相談例

3-2 作成に必要なものをそろえる

公正証書を作成するためには次のものを準備する必要があります。

事前準備物(以下の書類を事前に揃えて契約書を作成する司法書士に預けます)
・納税通知書または評価証明書(作成費用算出のため)
・本人確認資料の写し(免許証など)
・住民票(本籍地続柄記載)
・現在戸籍・改製原戸籍(相続人の確定のため)

当日持参物
・実印および印鑑証明書

3-3 公証役場に訪問する

公正証書を作るには、原則として契約当事者が公証役場に出向く必要があります。
なお、公証役場の場所は居住地によって指定されているわけではないので、全国どこの公証役場で作成しても構いません。

また、身体が不自由で出向くことができないケースでは出張料金を支払って自宅や老人ホームに出張してもらうことが場合によっては可能です。

4.公正証書を作成するための費用

家族信託契約書を公正証書にする際には、公証役場に手数料を支払う必要があります。
作成費用は、管理を委託する財産価額によって異なります。

なお、不動産を信託財産にした場合の財産価額は、実勢価格ではなく固定資産税評価額が用いられます。
たとえば、固定資産税評価額が8,000万円の不動産の場合、手数料は43,000円となります。

その他の費用

・家族信託契約書の作成費用

公正証書にする前に家族信託契約の内容をまとめるために、司法書士等の専門家に支払う手数料です。信託財産価額の0.5%~1%が手数料の目安となります。

・不動産を信託財産とした場合の登記手続き費用

不動産の信託登記を入れるに司法書士に支払う費用は、所有権移転登記ならびに信託登記で1件あたりおおむね5万円~10万円程度です。

さらに、委託者や受託者、受益者の氏名、住所、信託の目的などを記した信託目録登記で10万円程度の費用がかかります。

・登録免許税

信託の登記をすると登録免許税が課税されます。土地と家屋にかかる登録免許税は以下の通りです。土地 固定資産税評価額の0.3%家屋 固定資産税評価額の0.4%(平成30年11月現在)

まとめ

家族信託契約は公正証書で作成しなければ効力を発揮しないわけではありませんが、のちのトラブルを防ぐためには公正証書であることが欠かせません。
公証役場に持ち込む契約書案は司法書士等の専門家のサポートが必要になりますので、家族信託に精通した専門家に相談しましょう。

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