成年後見人のトラブルが続発!成年後見制度のトラブル事例と現状とは

後見人制度 トラブル

後見人制度を利用しようかと思ったらネットニュースで後見人の横領の話が・・・

せっかく後見人制度の利用を考えていてもネガティブなニュースを聞くと心配になりますよね。しかし、ネットニュースで流れている情報は、トラブルや不正の一端にすぎません。

事実、後見人による不正で毎年数十億の被害が発生しています。また、横領などの法に触れること以外にも様々なトラブル発生しています。

実はそのトラブルのほとんどは法定後見よるものなのです。

そこで、成年後見人による不正の現状や被害額、法定後見と親族とのトラブル事例をお伝えします。実際の事例を見ることで後見人制度によるトラブルの現状を見ていきましょう。

成年後見制度
任意後見
(判断能力が衰える前に利用)
法定後見
(判断能力が衰えた後に利用)

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1. 成年後見人による不正の現状

内閣府の調査によると、平成23年〜27年までに発生した成年後見人による不正件数・被害額は以下の通りになります。

平成23年:不正件数 311件 被害額 約334,000万円
平成24年:不正件数 624件 被害額 約481,000万円
平成25年:不正件数 662件 被害額 約449,000万円
平成26年:不正件数 831件 被害額 約567,000万円
平成27年:不正件数 521件 被害額 約297,000万円

後見人の不正・被害額

出典:内閣府

上のデータが示すように不正や被害の9割以上は,親族が後見人である場合に起こっています。このような不正事案の多くは、「親のお金だから」、「自分の生活費として自由に使ってもいいと思っていた」など後見人としての責任や義務についての知識不足が原因で発生しているのです。

では、親族ではなく、弁護士や司法書士などの職業後見人を成年後見人した方がよいのかというとそうではありません。なぜなら最近では、職業後見人による不正も増加傾向にあるからです。実際に弁護士が後見人として管理していた高齢女性の預金口座から約1300万円のお金を引き出して着服したとして業務上横領罪で起訴された事例もあります。

職業後見人による不正件数

また、こういった不正以外にも成年後見人による様々なトラブルが増加しています。そこで、次章では実際に成年後見人のトラブル事例としてどんなものがあるのかご紹介します。


2. 成年後見人のトラブル事例

成年後見人のトラブルは、認知症になってから申立てを行い選任される「法定後見」によるものがほとんどです。ここでは、そんな法定後見で起きたトラブル事例をご紹介します。

2-1. 親に会えない!突然の面会拒否にされるケース

ある日、いつものように母親のいる施設に足を運んだところ、施設側から急に「面会させることはできません。」と言われたらどうしますか?

これは実際にあった事例で、マンション経営をする資産家の父親が認知症になり、息子2人のうちの弟がすぐに知り合いの弁護士に頼み法定後見人を申請したケースです。

気を付けなければならないのは、法定後見制度を申請する際、家族全員の同意が無くても申請出来てしまうということです。

このケースでは、弟が先手をうち、もともとマンション経営のことで意見が対立していた兄に対して、後見人を通して面会を拒否するよう施設に申し入れし、面会を拒否されてしまいました。

2-2. 法定後見人に旦那の年金の利用を拒否されるケース

2人暮らしをしていた老夫婦の旦那様が認知症になってしまった時、奥様が家庭裁判所に対し、自分が法定後見人になると立候補して審判を待ちました。すると、後日届いた通知書には、自分ではなく、見ず知らずの弁護士の名前が書いてあったそうです。

それ以来、奥様の生活は一変しました。

旦那様の名義になっている預金通帳や銀行カードは全て後見人の弁護士に提出し、管理ももちろん後見人の弁護士。それまでは、生活費を夫の年金からも捻出していたのに、「旦那様の財産を減らすようなことは出来ない。」の一点張りで夫の年金をすべて取り上げられてしまったそうです。それまでとは比べものにならないくらい一気に生活は苦しくなったと言います。

2-3. 約束をしていたのに!入学費の支払いを拒否されるケース

これは、孫の入学費を巡ってトラブルになった事例です。

父親が認知症になる前、「孫が大学に入る時は入学費を全額出してやる」とよく言っていたそうです。なので、子供が無事に大学進学を決めた時も入学費の心配はしていなかったとのことですが、いざ入学費を支払おうと思い法定後見人にその旨を伝えたところ、「本人の為に使うお金なので、お孫さんの入学費は一切出せません。」とキッパリ断られてしまったそうです。

このように、法定後見制度を利用してトラブルになるケースは非常に多いです。その背景には、職業後見人への報酬が挙げられます。後見人への報酬は、被後見人の財産によって変動するため、より多くの財産をキープしておくことで自分への報酬を担保できると考えてしまう職業後見人もいるようです。

2-4. 仕事をしていないのでは?経費の使い方が怪しいケース

ある日、認知症である大伯母の財産である空き家の近所に住む方から「おたくの親戚の家がひどいことになっている」と連絡がありました。そんなはずはないと思い、家を見に行くとボロボロで雑草も伸び放題。玄関を開けると長年閉め切っていたような、カビ臭い空気が噴き出してきたそうです。実際にネズミか何か小動物でも棲み付いたのか、アンモニア臭が漂う部屋もありました。

大伯母の成年後見人である弁護士は、毎月レンタカーを借りて空き家の施設管理や風通しをしているといっているが、実際の家はボロボロ。

実際、同僚弁護士とレンタカーを借り、その経費を大伯母の口座から何度も引き出しており、その総額は、100万円や200万円ではきかないといいます。レンタカーを借りているのは本当のようですが、実際は家の管理ではなく温泉に行っているのではないかとご家族は怪しんでいます。

2-5. 開き直られた!法定後見人が仕事をしないケース

認知症である父には司法書士が法定後見人として選任されています。

問題が起こったのは、父の末弟が亡くなった時です。父は3人兄弟の長男で、次男夫婦が既に他界しており、もちろん両親も他界しているため、生涯独身であった末弟の財産は父と次男の娘に相続されることになります。私はてっきり父が法定相続分通りに財産を相続するものと思っていましたら、なんと相続放棄の方向で話が進んでいるようなのです。

どうやら父の娘である私の妹が事前に司法書士に相続放棄をして欲しいと連絡を入れていたようなのです。司法書士からは「あとはご家族で話し合って進めてほしい」と一方的に言われました。

本来は、後見人である司法書士が父の財産を守るために遺産分割協議を父の次男の娘と進めるべきなのに、それを怠っていることにおかしいと感じました。たとえ、父の娘からの発言であってもです。

このことを司法書士に問いただしたところ、なんと不服なら家庭裁判所に解任の請求をだしてくださいと開き直られ、今後連絡をしてこないように言われました。父の財産から報酬をもらっている法定後見人の対応として大変信じられないものでした。


3. 後見人のトラブルを避けるためにできること

認知症になる前や軽度の認知症の時に、家族信託や任意後見人の手続きを行っておくことが後見人のトラブルを避ける最も有益な方法です。

なぜなら、被後見人にとって信頼できる親族が財産の管理や身の上の監護を行うことで、法定後見人によるトラブルを避けることができるからです。また、家族信託や任意後見人は被後見人との契約による手続きのため、契約内容以外の財産の使い込みといった不正を防ぐこともできます。

既に、認知症になってしまった方は法定後見を利用するしかないため、そうなる前に、準備を進めることが大切です。

3-1. 家族信託を利用することで自由に財産管理を行う

被後見人の身近に信頼できる親族がいる場合は、認知症になる前に活用できる「家族信託」という手法を活用することで、自由に財産管理ができるようになります。

家族信託

後見人のトラブルのほとんどは、法定後見人になった不誠実な親族による不正や職業後見人の怠慢・不正によって起こるお金の問題です。

もし、まだ認知症になっておらず、被後見人の身近に信頼できる親族がいるならば、その親族に財産を適切に管理してもらうことでトラブルを防ぐことができます。また、先のような入学金の支払いを拒否された事例も家族信託を結ぶ時に定めておけば起こりえません。

この家族信託の詳しい内容ついては、こちらの「家族信託とは|親にも説明できる家族信託のしくみとメリット」「認知症対策に抜群の効果を発揮する≪家族信託≫の3つのメリット」をご覧ください。家族信託のメリットがよりよく理解できます。

3-2. 任意後見制度を利用することで身上監護を自分で行う

任意後見人になると、被後見人の日常生活の諸手続きや介護のサポートという身上監護が自分でできるようになります。

【身上監護に関すること】
1.日常生活に必要なサービスや商品の購入、契約
2.介護サービス等の利用に関する契約や履行請求
3.要介護認定の申請や意義申立て
4.福祉関係施設や医療機関の入所契約、入院契約、費用の支払い等

この任意後見人になることで、自由に財産管理ができる家族信託だけでは足りない被後見人の生活のサポートについてもできるようになるため、家族信託と併せて任意後見人になることがトラブルを避けるために重要になります。

この任意後見並びに法定後見人については、こちらの後見人になるにはどうしたらいい?相続で損しないために必須の知識」をご覧ください。


4. まとめ

後見人によるトラブルが多く発生していることがわかったと思います。

平成23年:不正件数 311件 被害額 約334,000万円
平成24年:不正件数 624件 被害額 約481,000万円
平成25年:不正件数 662件 被害額 約449,000万円
平成26年:不正件数 831件 被害額 約567,000万円
平成27年:不正件数 521件 被害額 約297,000万円

このような不正による被害やその他のトラブルを避けるために、法定後見制度はなるべく活用しないようにすることが大切になります。

既に法定後見制度を活用されている方は、こちら「後見人を解任する方法を解説!解任条件から解任申立の請求手続きまで」をご覧になって、今の後見人を解任できるか考えて見ましょう。

もし、認知症になる前に方がいる方は、家族信託や任意後見制度の活用をお勧めします。

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